水×ブリキの町で彼女は海を見つけられたか【ご来場ありがとうございました!!】 公演情報 アマヤドリ「水×ブリキの町で彼女は海を見つけられたか【ご来場ありがとうございました!!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『ブリキの町〜』ひょっとこ乱舞は、ついに「笑い」も手に入れてしまったのか?
    私は、この最近の数作から(プラスチックレモンから)しか観ていないのだが、ひょっとこ乱舞は、その「ひょっとこ」などという一見ひょうきんな劇団名の印象とは、やや異なり、ある意味ハードな佇まいに、センチメンタリズムを内在している舞台を行っていると感じていた。
    しかし、今回は、ついに「笑い」をも手に入れてしまった。

    今回も、フォーメーションとも言えるような役者の動きが美しい。
    物語を牽引する力も強い。

    もう1本の『水』との関係も意味深。

    ネタバレBOX

    リリー(KEKEさん)が想像するブリキの町の設定のようなものを、ノゾム(平館広大さん)が勝手に公開し、それを見ず知らずの人が広げていく。
    ブリキの町は、この町かもしれないし、そうではないかもしれない。
    物語は、人の手を経て、どんどん溢れ出してくる。

    もう1本の『水』のように、恋愛も語られるのだが、『水』ほど重くはない。軽みがある。ただし、『水』は、人の中に深く入っていくような物語だったのだが、こちらは、広がっていくような印象を受けた。

    しかし、広がっていくと言っても、世界の外に広がっていくのではなく、インナー部分への広がりである。

    頭の中で考えたブリキの町は、いろんな人の頭の中を通して広がっていくのだが、それはあくまでも「頭の中」であり、さらに言えば、最初に「0から1」を創り上げたリリーの手のひらの中に存在した宇宙だった。

    だから、いつでもリリーはこの物語を収束できるし、破壊することもできる。

    そして、さらに言えば、「自分の意志でそうした」と言うリリーの潜在意識の中にラクの物語が静かに吹き込まれ、それの中に存在したのかもしれない。

    そうした、物語 in 物語 in 物語 in ・・・・という、入れ子状態がまるで続くように。

    物語の構造だけでなく、ラストの、「雨の最初の一滴が目の粘膜に落ちていき身体の海に広がっていく」ような展開は、極小の中への無限の広がりをも感じさせる。
    そして、このセンチメンタリズムとも言える展開に、気がつくとやられていた。
    この感じが好きだから、ひょっとこ乱舞が好きなのかもしれないとも思ったり。

    今回に限らず、ひょっとこの舞台は、必ずと言っていいほど、ファーストシーンにフィードバックしていく。今回も2重にフィードバックして、閉じていった。
    この形式は、今回は特に活きているのではないかとも思った。

    フィードバックしていく形式は、クセみたいなものかもしれないが、ファーストシーンとラストシーンが、くるっと向かい合って、閉じていくラストは、美しいと思ってしまう。

    また、深読みすれば、「0から1」を創るのは、「大変ではないか」とノゾムが言う。それは、作・演の広田さんのホンネの言葉ではないだろうか。そして「それを5とか10」にしていくのは、役者やスタッフなのだろう。
    あるいは、「0から1」にしていくのは劇団で、それを「5や10にする」のは、観客なのかもしれない。

    すべてを閉じて、あるいは破壊することができるのは、創造者(たち)だけかもしれないのだが、そう思っていても、実のところ、「何かに」そうさせられているということがあると、(広田さんは)考えているのではないか、とも思った。

    とにかく、今回も台詞がいい。まるで強いエンジンを積んだ前輪駆動車のように、観客をぐいぐいひっぱっていく。
    それも力業ではなく、「笑い」という潤滑油が見事に効いているので、ぐいぐいいくのだ。

    『水』でも笑いが起こったのだが、私は最近の数本しか観ていないものの、これまでこんなに「笑い」が起こったひょっとこ乱舞の舞台はあったのだろうか。

    最近の数本では、いくつかのピースに細かく分かれた物語が、みるみる見事なフォーメーションで構築されていく様が、気持ち良かったのだが、今回の「笑い」という新たな武器も素晴らしい。すぅーっと入ってきやすいのだ。

    エコ役の笠井里美さんがとにかく素晴らしい。あっけらかんとして、どこかに突き抜けていくような感じが、舞台の雰囲気を醸し出していた。その突き抜け方が、どこかけなげにさえ思えてくる。
    そしての、555(伊藤今人さん)の「間」がいいのだ。さらに、ガラム(板橋駿谷さん・当パン名前誤植では)との絡みがナイス!
    彼らが物語の足場をきちんと構築していたのではないだろうか。それは、「現実」という足場である。

    また、ラスト近くのラク(松下仁さん)の独白は、ひょっとこ乱舞ならではの熱を帯び、物語を幕引きに見事に導いた。

    「笑い」を手に入れたひょっとこ乱舞は、今後、どういう方向に進んでいくのか、とても楽しみだ。

    4

    2010/06/29 08:21

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  • KAEさん

    >劇団員の中にお名前ありません

    そうなんですか。
    てっきり、今回はザ・キャラクターと重なったので出てないのかと思ってました。
    さらに劇団のHPには、メンバーの一覧は「準備中」のままで、表示されないので、どうしたのかが、わかりませんでしたので。
    そう言えば、チョウソンハさんは、劇団にいたときから、マネジメントは別だったような気がします。

    いずれにしても、また出てくれるといいですね。

    2010/07/01 07:35

    アキラ様

    ソンハさん、そのようです。劇団員の中にお名前ありませんし、先日観たお芝居でも、ソンハさんは所属先が書いてありませんでした。どこかの記事で、退団されたと書いてあったようにも思います。

    元々は、ソンハさんがきっかけで、ひょっとこ乱舞ファンになったので、とても残念ですが、あれだけ、引っ張りだこの役者さんになられては、実質的に、御無理だったかもしれないですね。

    でも、また客演の形でもいいから、いつかひょっとこの舞台に、戻って来て下さるといいのですが…。

    2010/06/30 21:56

    KAEさん

    コメントありがとうございます。

    ひょっとこ乱舞は大好きな劇団です。

    チョウソンハさん抜けたんですか?

    2010/06/30 06:02

    アキラ様

    ひょっとこ乱舞、予定入れなきゃと思っている内に、どんどんスケジュールが埋まって、観に行けそうもありません。(泣く)

    この劇団の作品は、皆様のレビューを読んでも、舞台の様子が掴みにくく、地団駄踏んでいましたが、とにかくアキラさんの御感想から、チョー・ソンハさんが抜けても、この劇団は更に進化するだろう予測がついて、ほっと胸を撫で下ろしました。

    笑いが加わったひょっとこ、是非体感したかったなあと残念ですが…。

    2010/06/29 13:15

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