実演鑑賞
満足度★★★
「終わりよければすべてよし」
死んだ父伯爵の喪から、ヘレナ(中嶋朋子)のフランス王の治療、バートラム(浦井健治)への求婚まではヘレナの目論見通り。ところがバートラムは、断固ヘレナを拒み、イタリアの戦場へ。そこでヘレナもイタリアへ巡礼者に身をやつして、なんとしてもバートラムをわがものにしようと…。と、ここまでは台本通りという感じで気分がのらない。
ところが、最後にきて、がぜん面白かった。ヘレナは死んだと思われているから、バートラムは王の勘気も解け、ラフュー公の娘と婚約…と、明後日の方から始まって、二つの指輪がカギになって、バートラムの甘い夢はもろくも崩れていく。その慌てぶりやごまかそうとしての右往左往が面白い。ダイアナ(ソニン)が「あの男は私にと結婚の約束をした」とバートラムの不実を責めるが、これは序の口で、切り札のヘレナがなかなか現れない。観客をじらしにじらす。最後の場は簡単に種明かしして終わり、と思っていたら、さにあらず。最後の場だけで30分か40分とたっぷりある。ここは「演劇的アイロニー」が存分に味わえるところだ。