実演鑑賞
満足度★★★★
久々の古川健戯曲の舞台鑑賞。やはり歴史物(とりわけ戦争責任にまつわる)をやらせると右に出る者無しではないか。戦時中実在した通信社のの「戦争」と共に歩んだ軌跡を、ジャーナリズム精神の視点から批評的に描いた力作。
登場人物中、海外からの情報を参照する語学力と現状分析力に長けた加藤という人物が、彼の提供した情報にも関わらずこれを無視したとしか思えない戦争続行の決断または停戦交渉を怠った不作為への批判を可能にする。「知りえた情報」を前に、それをどう受け止め、これ以上の犠牲を出さないための判断ができるか・・厳しくこれを問わなかった陸海軍を悪しき先例とするなら、科学的精神の発露を尊重し、知に対する畏敬を育むことがこれに応える一つと言えそうだが、学術会議や大学改革などを見る限り現状はそれに逆行する。
損得利害を離れた領域が、今や聖域と化しつつあるようで・・知に謙虚に問うてみる科学的態度の大きな後退が
見られた例が、東電による「処理水」海洋放水を巡る反応であった。
大手メディアさえ政府・東電の説明に疑問も挟まず看過した。日本は十分に戦前化しており、その事にあまりに無自覚である。