多重露光 公演情報 (株)モボ・モガ「多重露光」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    なんといっても稲垣吾郎のための芝居。そこにいて声を出すだけで舞台が成り立つ。他のキャストは出入りが多い中で、稲垣吾郎だけほぼ出ずっぱりであることに、この芝居の構造が集約されている。間口の広い舞台なのに、まったく隙間を感じさせないオーラは、やはりスターである。
    したがって、泣いたり叫んだりのオーバーアクションをしない、彼の自然体のたたずまいが舞台のトーンを決める。稲垣の独白の多い戯曲とあいまって、安定して落ち着いてみられる芝居だが、激しい衝突や修羅場も、意外とあっさり終わってしまうのは否めない。

    冒頭、橋爪未萠里がキャンキャンせめて場を盛り上げ、竹井亮介が、天然のボケに徹して笑わせに行くのだが、、どうも笑いがはじけない。それも稲垣吾郎の、柳に風と受け流すのがあまりに自然だから、周りが浮いてしまうからだろう。

    ネタバレBOX

    いくつか仕掛けが仕込まれているが、その生かし方がもったいない。一つは純九郎(稲垣)が、小学生時代、仲睦まじい近所の一家に憧れて、家族写真を盗み出してしまっていたこと。これを後半で麗華(真飛聖)がその写真を見つけて、責める。しかし、観客にはあらかじめ純九郎の独白で明らかにしているので、驚きが弱いし、麗華の責め方も中途半端になってしまう。
    もう一つは、戦場カメラマンの父親(相島和幸)が生きていたこと。これも、途中の母親(石橋けい)の回想シーン(ここだけ稲垣吾郎はいない)でネタバレしている。母親が昔、急に寝込んだことがあった、きっと父の死の知らせを受け取ったのだろう……だけで寸止めしておけば、クライマックスの父帰宅の意外感がもっと違っただろう。母との回想も最後にとっておいてもいいのではないか?

    純九郎が高校の運動会の撮影をすっぽかすのも、やりようによってはもっと修羅場になるところだ。

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    2023/10/21 23:49

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