実演鑑賞
満足度★★★
なんといっても稲垣吾郎のための芝居。そこにいて声を出すだけで舞台が成り立つ。他のキャストは出入りが多い中で、稲垣吾郎だけほぼ出ずっぱりであることに、この芝居の構造が集約されている。間口の広い舞台なのに、まったく隙間を感じさせないオーラは、やはりスターである。
したがって、泣いたり叫んだりのオーバーアクションをしない、彼の自然体のたたずまいが舞台のトーンを決める。稲垣の独白の多い戯曲とあいまって、安定して落ち着いてみられる芝居だが、激しい衝突や修羅場も、意外とあっさり終わってしまうのは否めない。
冒頭、橋爪未萠里がキャンキャンせめて場を盛り上げ、竹井亮介が、天然のボケに徹して笑わせに行くのだが、、どうも笑いがはじけない。それも稲垣吾郎の、柳に風と受け流すのがあまりに自然だから、周りが浮いてしまうからだろう。