実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/10/14 (土) 12:00
当たり前のように続く日々の暮らしの中で、主人公や周囲の人々が抱え続けてきたやるせなさや淋しさや憧憬や、その他の名付けようのない思いを丁重にすくいあげ(しかしどこにも行き場は示されないまま)じんわりと沁みた。終盤のある会話がとても好きだった。
実演鑑賞
満足度★★★
なんといっても稲垣吾郎のための芝居。そこにいて声を出すだけで舞台が成り立つ。他のキャストは出入りが多い中で、稲垣吾郎だけほぼ出ずっぱりであることに、この芝居の構造が集約されている。間口の広い舞台なのに、まったく隙間を感じさせないオーラは、やはりスターである。
したがって、泣いたり叫んだりのオーバーアクションをしない、彼の自然体のたたずまいが舞台のトーンを決める。稲垣の独白の多い戯曲とあいまって、安定して落ち着いてみられる芝居だが、激しい衝突や修羅場も、意外とあっさり終わってしまうのは否めない。
冒頭、橋爪未萠里がキャンキャンせめて場を盛り上げ、竹井亮介が、天然のボケに徹して笑わせに行くのだが、、どうも笑いがはじけない。それも稲垣吾郎の、柳に風と受け流すのがあまりに自然だから、周りが浮いてしまうからだろう。
実演鑑賞
満足度★
これはなんと呼べばいい出し物なのだろうか。
舞台で演劇として進行するし、作者は演劇界若手の星、横山拓也、演出は今や俳優座の代表的演出家である真鍋卓嗣。ほぼ千をこえる二階まである観客席は満席である。その観客は三十歳代から五十歳代の女性観客ばかりで、2時間10分ほど、休憩なしの公演である。
しかし、舞台の上で演じられるのは、演劇では全くない。ファンタジーでもなければ、世態劇でもない。演劇としてみればただただ空疎な台詞の声が飛び交う時間が過ぎていくだけなのだが、会場にきている観客は満足し、一万円を超える料金を惜しげもなく払う。数回見る客も少なくないと聞く。
横山、真鍋という日本の演劇を預かる逸材が関わって、形としては演劇なのに、演劇の客はまるでいない。会場で販売しているのはグッズで配役表すらない。中堅の俳優もお役目は果たしているが面白がってやっているようには見えない。これが、演劇の一面を具体的に顕わしていることは疑うことの出来ない事実である、目前でジャニーズに始まる事件のほんとうの姿を見ているとすれば、なんだか空恐ろしくなる。そうかこれが実態だったのか、と腑に落ちる。教訓もある。一種独特の宗教的雰囲気と合わせ一度は経験しておくべきものだろう。