エラーメッセージ 公演情報 tea for two「エラーメッセージ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    わかりやすい「わかりにくさ」
    3連の3人芝居、
    とてもルーズなつながりを持たせて・・・。

    取違いのわかりやすさから
    真実のわかりにくさまで、
    見事に織り上げられておりました。

    ネタバレBOX

    第一話はある意味シンプルで、
    医者の嘘について、
    それが確認できる
    明確に法則が示されていてわかりやすい。
    わかりやすいからこそコミカルで、
    意図せざるがん告知というシリアスな部分を含んでいても
    作劇の秀逸さがしっかりと笑いを運んでくれる。

    第二話では、
    取違いの事実が明示される一方で
    なにが隠され何が真実となったのかは
    曖昧にされます。
    捉えられた妻、弁護士、夫・・・、
    関わる人間のそれぞれの事情が
    行き違いを複雑にして、
    その中にシンプルな真実が埋もれていきます。

    コスプレネタなど、下世話に笑えたりもするのですが、
    夫婦の関係がそんな風に生々しいだけに
    真実が埋もれていく感覚にリアリティが生まれて・・・。

    三話目に至ると
    マスメディアの力までが絡んで、
    取り違えの結果が公然と真実の衣を着てしまう。
    賞を受賞したことで賞賛されインタビューまでされた女性と、
    二話で逮捕された女性と見間違えられ
    現場にいた犯人として姿を放映されてしまった女性。

    しかも、物語は単純には終らない・・・。
    間違って賞賛された女性の真実は単純に正されるのですが
    そこには、霧散した賞賛に置き去りにされた女性の心情が浮かぶ。
    そして、犯人として姿を放映された女性のインタビューからは
    観る側が知りえなかった事実が浮かび上がって・、
    それは状況証拠としての彼女の犯行を暗示しているように思えて

    どの物語も、話の結末は描かれません。
    第一話でガンの告知を受けた看護士が
    その後どうなったのかもわからないし、
    第二話で獄中の妻が釈放されたのかはさだかでない。
    第三話でも、賞賛を受けた女性のその後や
    犯人として放映された女性によって語られたことの結末は、
    明示されないのです。

    真実はとてもシンプルなことだと思うのですよ・・・。
    でも、この物語たちからは
    当たり前のように生じる善意・悪意をとりまぜた
    思い込みや取違いに
    真実への確信がいともたやすく曖昧になっていく姿が
    描かれていて、
    言葉では表現できないような不安定な感覚に
    愕然とするのです。

    3つのエピソードに緩やかなつながりを持たせるのも
    うまいと思う。
    様々なレベルでの誤りの重なりに取り巻かれている感触が
    観る側を幾重にも浸蝕していきます。
    役者にも取違いの事実を語るに留まらず
    事実の質感を作り出すだけの力量があって
    コメディタッチの口当たりのよい導入部分から
    ぞくっとするような
    それぞれの視座へと確実に観客を導いていく。

    語られない結末は
    埋もれたままの真実の
    忘却への暗示にも思えて・・・。

    作り手のしたたかな企みと
    しなやかな作劇の手腕に
    舌を巻いたことでした。






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    2010/06/21 11:29

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