雨の終わりかけに怒鳴りたて 公演情報 劇団東京座「雨の終わりかけに怒鳴りたて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    舞台美術とおどろおどろしい雰囲気といった見た目は良かった。しかし、物語の構成が 有名なそして話題作となった邦画の組み合わせのようで、新鮮味が感じられなかったのが憾み。

    少しネタバレするが、物語の枠組みとラストの高笑いしながら金を渡すシーンは TV・映画の話題作、話の中心になる女郎屋の遊女と若侍の件は、某映画賞受賞(江戸・深川の岡場所が舞台)した 夫々の映画を組み合わせて紡いでいるといった印象だ。それを傀儡子といった妖しげな要素を取り入れて観せる。

    音響や照明といった舞台技術で観(魅)せている。また衣裳は勿論、舞台美術が時代や状況をうまく醸し出し、見た目の妖しさで物語の世界へ誘う。演出は巧く、また遊女----女の情念、人間の業を描き 掘り下げようとしているだけに、既視感ある脚本が惜しい。
    第35回池袋演劇祭参加作品(★評価は演劇祭授賞式後)。⇒★3つ
    (上演時間2時間30分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は和風で、中央奥に段差のある障子扉、上手は床の間に掛け軸、そして主舞台になる女郎屋の和室ー箪笥・衣桁に派手な着物等、下手は別場所で赤い毛氈が。お面等の飾り物が怪しい雰囲気を漂わす。

    冒頭 怪しい呪術師風の人物による傀儡によって幻想(術)的な世界観へ誘なわれる。しかし ラストに明かされるのは、物語全体が 仕込み詐欺という偽(幻)の世界。これが話題作になった映画「コンフィデンスマンJP」シリーズの仕込詐欺のよう。そして物語の中心ー女郎屋の遊女と若侍の件は、映画「海が見ていた」(山路ふみ子新人女優賞 遠野凪子)のようだ。もっとも映画脚本の黒澤明は 山本周五郎の小説をいくつか参考にしているから、同じような設定になったのかも知れない。この全体の構成とメインシーンに既視感があり 新鮮味を欠いた。

    公演の魅力は、妖艶な雰囲気を醸し出す女郎屋、そこで働かされる遊女の色香。その対となるような怪しげな呪術師風の台詞「ひとつの理でございます」と傀儡の動作。その女優・男優の観(魅)せる演技が良い。また妖しげさを助長する舞台技術ーー照明は色彩だけではなく その明暗といった諧調、音響は雷鳴を轟かす不気味さーーによって ふわふわとした中に激しい情念を感じる。

    油揚げ、お面といった狐を思わせる場面があり、それが一層 怪しさを助長する。しかし、エレキテルや女将・遊女が金平糖・かりんとう を食べるなど 冗長に思えるシーンも少なくない。構成におけるシーンの意味と必要の有無について、が課題ではないだろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2023/10/01 09:05

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大