最悪の場合は 公演情報 トツゲキ倶楽部「最悪の場合は」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    タイトル「最悪の場合は」は、説明の世間と宇宙、本音と建前、不正と隠蔽、そして希望と現実を表している。そして前作「星の果てまで7人で」と繋がるような物語。少しネタバレするが、日本宇宙開発機構-JSA(ジェイサ)が舞台というのが妙。表層の面白さ、その奥には職場愛と人間愛が詰まった人間関係・仕事群像活劇、観応え十分。

    そこで起きたであろう不祥事にどう対処するか。初演(2018年)時は日大アメフト部が不祥事を起こしていたが、再び日大アメフト部が不祥事を起こした時期に再演する偶然。またジャニーズ事務所の性加害問題を始め不祥事に係る記者会見が開かれている。なんとタイムリーな内容(公演)であろうか。公演では、宇宙という夢と希望を担う職場における悪夢と現実(最悪)を上手く繋ぎ、勤め人(組織人)の共感を誘う。立ち位置の違いによって不祥事への対処方針が異なる、その濃密な激論が見どころの1つであろう。

    前作が宇宙での出来事(地球への思い)を描いているとすれば、本作は地球(地上)において宇宙への思いを馳せる。しかし現実に目を向ければ危機回避に追われる姿。そこには不祥事をどのように収拾するかといったドタバタの裏に 生活という のっぴきならない事情を垣間見せる凄(惨)さ。

    会見をする組織の内幕だけではなく、それを報道する機関の在り方にも 一石を投じる幅広さ。冒頭、社外から招聘したリスクマネージメント・コンサルタントが謝罪会見の目的などの蘊蓄を語るが、実際 謝罪会見を行うのは人であるから思惑通りにならない可笑しみが…。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に横長テーブルと椅子があるだけ。舞台(職場)は日本宇宙開発機構という政府関係機関。そこの理事が接待 賄賂を受け取ったという疑惑がもたれ、それの釈明会見をする準備(リハーサル)をしているシーンから始まる。その担当が広報部第二課で、いかに上手く釈明会見ができるか、リスク・マネージメント・コンサルタントからアドバイスを受ける。一方、第一課は もうすぐ地球に帰還する衛星探査機マリナの記者会見準備をしている。同じ広報部でも役割分担によって陰・陽のように地味か華々しい会見内容になる。

    二課の釈明会見は理事が開き直り、釈明どころか賄賂を受け取ったことを認め紛糾する。その際、内々にしていたマリナ帰還を口走ってしまう。慌てる一課と二課の騒動を通してセクト意識が顕わになり、同時に責任の擦り合いが始まる。そん時、マリナの異常(故障)が分かり、地球への帰還が危ぶまれる。いや 地球へ帰還する場合は都市部へ墜落する危険が…。広報課として、どのように情報提供するか喧々諤々の論争が始まる。そして どちらの課が担当するのか。

    一課の課長は JSAのプロパー職員、一方 二課の課長は中央官庁からの出向職員という立ち位置が、その発言に表れる。一課長は、宇宙事業に携わっている自負、危機管理の観点から地球(地上)墜落を周知する、対して 二課長は、不確かな情報で国民を混乱させないため周知しない、それぞれの主張で激論する。この誰のため 何のため、その方法と効果はといった深みある議論が見所。そして 出向者という事勿れ主義、責任を負いたくないという立場が露呈する。

    JSAで宇宙事業に携わっているとはいえ、生活の糧を得る職場であることに変わりはない。マリナが墜落するかも知れないという 不確実な情報で国民からのバッシング、その結果 職を失うかも そんな不安もよぎる。出向者(二課長)は、出向元の官庁へ戻り安泰という構図が<立場と責任>に重なる。そしてJSA内に東西TVディレクターが出入りしており、内部情報を独占的に得ている。その内々(秘密)情報の公開 有無の判断も気になるところ。

    舞台技術、特に照明の諧調によって情況や状況を表す巧さ。壁際に 等間隔に立っている衝立への照射角度によっては鯨幕に観える。その意味ではシンプルな舞台セットながら実に効果的な造作になっている。その衝立を職場の壁に見立て、覗き 聞き耳を立てといった身近で現実味のある光景が…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/09/30 12:05

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