想い光芒、想われ曙光 公演情報 劇団25、6時間「想い光芒、想われ曙光」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    人・家族の愛情と伝承というかランタンを空へ飛ばすコムローイ祭りを絡めたヒューマンドラマ。
    第35回池袋演劇祭参加作品(★評価は演劇祭授賞式後)。

    愛情も伝承も目に見えず、その確認が難しいという共通性があるが、それをヒロインの事情に重ねて紡ぐ。このヒロインの過去・生い立ちがドラマのカギ。人の愛や家族の幸せを求める、しかし 何が<普通の愛や幸せ>なのか説明できない。坦々とした暮らし、が 手放して初めて分かる 愛と幸せ という思い。

    タイトル「想い光芒、想われ曙光」の<光>は 勿論ランタンを意味しているだろう。同時に家族の約束の意も込められている。そしてランタン祭りの夜にだけ会える水の精霊姉妹ーーまるで七夕の彦星と織姫のようなーーが人の運気を掌る。物語は 情緒と抒情といった心と光(風)景を観るような余韻あるもの。

    祭りの雰囲気は、ランタンが灯り 両壁に花火の映像を映す。それを見上げる人々は着物姿という風情あるもの。舞台美術は上手 下手がほぼ対称で段差(階段)がある。その上り下りが時間と場所の変化を表し、さらにキャストの動きに躍動感ー生きている を感じさせる。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし)【A】

    ネタバレBOX

    孤児院育ちの女性 明(香月美慧サン)が、そこで知り合った男性と結婚し幸せな家庭を築くはずだったが…。女性は母からのネグレクトによって、愛することが怖く いつの間にか人を愛することが出来なくなった。それでも同じ境遇(孤児院育ち)の男性 四宮遼と結婚した。 ある日 家の前に赤ん坊が捨てられており、自ら育てようと決心した。が、彼女にはもう一つ決定的に愛が確認できない理由・・人の顔が覚えられない病気(相貌失認)があった。

    遼は、社会的に成功を収め 金も地位も信頼も欲しいがままにしていた。しかし、それらは彼の心を満たすものではなく、業績が上がっても 心の乾きは増していく。そして別れた妻 明と子の写真を眺め夢想に浸るばかり。ある日、街の片隅にある薄汚れた社(やしろ)を穢したことで、水の精霊の怒りをかってしまう。そして仕事に悪影響が出始める。

    この2つの出来事を絡め、血の繋がりはないが<愛>と<情>を持つことが出来るという予定調和へ。大団円へ導くのは、水の妖精姉妹のお伽話…ランタン祭りの日に 姉妹は出会えるという言い伝えがあった。しかし時代と共に祭り自体も廃れて、俗にいう世知辛い世の中が浮き上がる。
    場面毎に リアル+ファンタジー+ユーモラスな雰囲気を漂わせるような工夫が観てとれる。

    先行き不透明で不寛容になってきた今こそ、血の繋がりのない疑似家族とも言えるような人間関係に焦点をあてる。そこには見守る友人や会社の人々の優しさ温かさが希望の光となっている。勿論 ランタンの〈灯〉に重ねていることだろう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/09/08 16:27

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