好きなのに 公演情報 中央大学第二演劇研究会「好きなのに」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     生まれて初めて中大多摩キャンパスを訪れた。上演した場所は、学生会館として利用されていると思われるキャンパス入口から直ぐの建物4号館の4201教室、イベントスペースNightである。都区内に居を構えていた多くの大学が郊外に移転し始めて既に50年近く経つのか? 中大のお茶の水校舎は、学食が安くて旨いと評判だったこともあり、時々出掛けていたが、学館らしき建物は、我々の学生時代の学館に何となく似た雰囲気を漂わせている。閑話休題、本筋に入ろう。

    ネタバレBOX


     言うまでもなく「恋」は、多くの表現ジャンルで最も多く扱われる題材の1つである。それは誰もが何らかの形で経験しその人生の中で最も深く、激しく身悶え深く生きる経験でもある。大抵は何らかの障害があり、その障害が益々恋心を燃え立たせる。常に不安と希望が己が心の中で争闘を繰り返し、一瞬も魂の安らぐことはない。厳しく辛く己が身を焦がす昏い炎でもあるが、何か成就の兆しが見えれば空にも昇らんばかりの歓喜に包まれるのも事実。
     一方、これら通常の恋が成立し得ない、してはいけない関係というものがあるのも事実である。滾り立つパッションが抗うことのできない、本人にとっては最も根源的なアンヴィヴァレンツが、互いの滾る念を引き裂いているとしたら? その時、ヒトは人としてどのような選択をし、どのように生きられるか? そこまで踏み込んだ脚本であり、その宿命を若い人々が描いた作品である。実際にはどのように物語が紡がれてゆくか、実地に体験することをお勧めする。
     舞台美術は、かなりしっかり作り込まれている。側壁天井やホリゾント近くから下がる濃紺系統の布の間に「の右方向の線を更に右に延ばしたような白いパネルを2つ、前後に人の通れるほどの距離をとって設え出捌けの裏導線とした他、側壁に掛かる濃紺の布部分を出捌けに用いるなど都合3か所の出捌け。板正面の壁際には下手コーナー辺りに収納家具、センター辺りに本棚が見え、これらの手前、観客席側の板中央辺りに応接セットのソファ、テーブルが置かれている。また、上手壁際にはバーカウンターと丸椅子が置かれ喫茶店のカウンターを表している。応接セットやバーカウンターなどには花が生けられ大切な働きをするのも、今作に登場する人物たちの幾人かの繊細なメンタリティーを現すのに寄与し小道具の使い方も上手い。お勧めの70分である。
     脚本、演出、演技も良く、舞台美術もおしゃれだし、小道具の使い方も上手いが、いつも通りスタッフの対応も良い。

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    2023/09/03 11:07

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