新・ワーグナー家の女 公演情報 Brave Step 「新・ワーグナー家の女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    濃密で緊迫した母娘の会話劇。
    物語は1946年、廃墟と化したドイツのバイロイトで開かれた委員会に参考人として召喚された女性、そして もう一人の若い女性の対峙を通して戦時中のナチスドイツ(ヒトラー)の関係を明らかにする。初演は2004年、このような芳醇な香りを思わせる公演は初めてである。

    1946年という設定であるが、会話から現代に通じる問題が次々に浮かび上がる。第三帝国という破滅への背景には、当時の不景気、不寛容、防衛のため…どこかで聞いたような言葉が述べられる。現実に世界のどこかで戦争や紛争が続いている。それは対岸の火事(戦火)ではなく、グローバル化した現代においては何らかの影響を受け、与えることになる。そんな怖さを感じさせる。

    ピアノの生演奏(「タンホイザー序曲」を始め有名クラシック音楽)という贅沢さ、2人の女性は勿論、委員会委員(コロス)、そして場内に飾られた肖像画等への照明が物語を印象的・効果的に観(魅)せている。また コロスは(有名)指揮者であり、ナチス兵・委員という複数の役を兼ね時の流れを表す。

    立場の違う母と娘…チラシでいうところの敗戦国ドイツ、戦勝国アメリカ、どちらにしても「バイロイト音楽祭」はワーグナー家が仕切ることが出来た。そして 戦中・戦後の一時期を除き、「バイロイト音楽祭」は 別名リヒャルト・ワーグナー音楽祭といわれるように、彼のオペラ・楽劇を演目としており、現在も続いている。その意味では<音楽祭>を守り継続させるための 母娘の深謀のような気もするが…。だからこそ「新・ワーグナー家の女」なのだろうか。
    (上演時間2時間 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央に大きめの椅子、周りに不規則に置かれた机と椅子。中央奥の壁にはヒトラーの肖像画が見える。また有名な指揮者の絵画か写真も飾られている。しかし何となく 廃墟然とした雰囲気が漂い、薄暗い中で母が淡々と語る。そして娘が登場し母と対峙してからは緊張感ある激論が始まる。

    物語は、委員会に召喚された母ヴィニフレッド・ワーグナー(観世葉子サン)とその娘フリーデリント・ワーグナー(新澤 泉サン)が、戦時中のナチスドイツ(ヒトラー)との関り、特に「バイロイト音楽祭」を巡り激論する。そこで明らかになるのは、ナチス時代にワーグナーがどう受け入れられていたか、そしてナチスとはなんだったのか。物語のほとんどは、この2人の息詰まる台詞の攻防に終始するといっても過言ではない。そして母の不遜 尊大な態度、娘の鋭い理論的な追及といった立場の違いを、観世葉子さんと新澤 泉さんが見事に演じていた。

    ナチスが、19世紀まで続いた伝統的な社会価値や秩序に対し、ある種の変革を打ち出し民衆の支持を得ていたらしい。 第2次世界大戦中も「バイロイト音楽祭」はナチスの支援下を受けており、母が時代を乗り切るため 生きるが故に矛盾や絶望に苛まれていた訳でもない。一方 娘はアメリカへ渡り反ナチ活動をしており、両者とも実情に基づいている。それ故 言葉(台詞)に誤魔化しがなく重みがあり、時代と人間のドラマを感じさせる。ヴィニフレッド・ワーグナーは、ナチス ドイツの傷を自らに刻みつつ、それからも運命に翻弄されながら逞しく生き抜いたようだ。

    公演は、リヒャルト・ワーグナー「バイロイト音楽祭」を題材にしていることから、彼の曲をピアノの生演奏で聴かせる。演奏は高橋瞳輝子さんであるが、彼女の衣裳は黒一色で黒子に徹したかのよう。この公演を影?からしっかり支えていた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/09/02 07:16

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