カナリアの心臓【公演終了・ご来場誠にありがとうございました!】 公演情報 キコ qui-co.「カナリアの心臓【公演終了・ご来場誠にありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    絶妙な距離感の勝利
    初日に拝見しました。

    登場人物たちの距離感の変化に
    次第に時間の軸が重なって・・・。

    内包されたゆるい痛みに押されるように
    引き込まれ見続けてしまいました。

    ネタバレBOX

    父が荼毘に付される
    その煙を眺める冒頭のシーン。
    役者たちの立ち位置の取り方が絶妙で
    そこから、しなやかに登場人物たちの間での
    接点での距離感が漂ってくる。

    今の時間が少しずつ進むにつれて
    その軋みから表れてくるような
    過去の質感にぐいぐいと引き込まれる。
    淡々と語られる狂気の日常的な肌合い。
    舞台上のキャラクターたちの立ち位置や想いには
    絡まり合うような場面であっても、
    よしんば狂気の中であっても、
    距離がしっかりと描かれていて。
    それゆえにその世界が崩れる感覚や
    変化していくものの質感が
    深く鮮やかに伝わって・・・。

    うまく言えないのですが、
    観る側が役者を信頼してゆだねることができる感じが
    前半からしっかりと醸成されているのがよい。
    それぞれの物語の立ち位置に曖昧さがないから、
    3人の父母たちや、堀が演じる女性の父母も含めて
    舞台上の個々にとって見えているものと
    そうでないものが、
    距離感に裏打ちされた
    しっかりとしたエッジを持ってやってくるのです。

    物語から見えない部分を
    役者がぶれずに貫いてくれるから
    霧が晴れるように見えてくる後半に
    観る側の戸惑いがない。
    そのままに導きいれられた、
    兄の出所時のクロスしても重ならない風景や、
    母の個々への影の色が
    息をのむほどクリアに伝わってくる。

    カナリアの鳴き声と心臓の鼓動に太く枠とられた
    修羅の時間・・・、
    狂気にベクトルを失い交わらなくなった時間を
    摘み取る刹那に
    それぞれの鮮やかな陰影が生まれて・・・。

    ラスト、
    そのシーンのリアリティから
    重なりあって作りだされたテンションがほどけて
    同じ空間の兄弟がばらけていくような感覚が訪れる。
    その位置から、
    解けてそれぞれに続いていくであろう時間が
    ラップタイムで止まったストップウォッチが動き出すように
    刻まれていく感じがして・・。

    終演後に刹那ごとの感覚がしっかりと残って、
    客電の明るさとともに
    qui-coの作りだす世界に浸されていたことに気がついたことでした。




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    2010/06/13 09:21

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