テンペスト 公演情報 劇団俳小「テンペスト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    シェイクスピアは面白い
    シアターグリーン・ベースシアターという小さなサイズにうまくマッチした演出で、シンプルに、そして軽く物語を見せてくれた。重厚だったり、格式張ったりしていないが、これはこれでアリではないかと思った。つまり、大げさでないところがいいと思ったのだ。

    テンペストという、オリジナルの物語は面白いと思う。それだけに下手に演じて演出されると、とても退屈になってしまうのだが、今回はそんなことはなかった。

    饒舌な演劇なのに、その饒舌臭さをあまり感じず、約2時間の舞台は飽きることはなかった。

    ネタバレBOX

    まず配役が面白い。ここにはアイデアがあった。
    ナポリ王・アロンゾー(堀越健次さん)、その弟・セバスチャン(松永陽三さん)、そして、プロスペローの弟で、現ミラノ大公・アントーニオ(山田喜久男さん)という位の高い役と、賄い方・ステファノー、道化・トリンキュロー、さらに奴隷のキャリバンという下層の役をそれぞれ同じ役者が演じるのだ。
    したがって、彼らは、王侯貴族の役と庶民奴隷の役をシーンごとに演じ分けるのだ。

    まさに、人の裏表(当日パンフで彼らの写真がネガとポジになっていて、それを如実に表している)。
    王たちは、威厳を保っているように見えるが、かつてプロスペローを追放したり、また、今のナポリ王の地位を奪おうしていたりと、一皮剥けば、醜い姿がそこにある。
    一方、ステファノーたちは、自分の欲望の趣くままに、滑稽に行動する。

    そんな2役を楽しそうに演じているのだ。その様子は見ていて楽しいし。巧みな演出だと思った。
    イタリアの仮面劇のようにキャラクターがしっかりした、軽くて喜劇的な匂いをそこに感じた、というのは言いすぎだろうか。

    途中で、衣装替えの様子を舞台で演じさせるという趣向や、ステファノーたちに、アロンゾーたちが着ていた衣装によく似たボロの衣装を着せるというのは、彼らが2役を演じている意味と意図を、きちんと示しており、とても面白いと思った。

    セットはシンプル。嵐のときに雲らしきものをバックに投影したり、日食のような照明を照らしたりするところはあるものの、ほとんどは灰色の壁であった。ただし、これは、全体の印象が重くなりがちなので、白のほうがいいと思ったのだが。
    床は格子状になっていて、ところどころに棒を差し込めるようになっていたり、枠が現れたりするようになっていた。実にシンプルだが、単に棒を置いたり、枠を舞台袖から持ってくるよりも効果的だと思った。
    また、道具も衣装も最小限で実にシンプルにしてあり、最小限のものでイマジネーションを膨らませるようにしてあった(妖精たちによる怪鳥が現れるシーンなどはまさにそう)。
    単なる棒にしても、妖精の力を見せたり、王たちへの戒め(魔法にかかった状態等)だったりと、効果的に使われるのだ。

    シンプルなのだが、演出が手際よく、舞台の空間を無駄なく使い、さらにシンボル的に見せるカタチを役者たちの身体によって作り、それが全体の中でうまくアクセントとなり、リズムを作っていた。

    音楽は、役者が鍵盤ハーモニカや太鼓、鈴、トライアングルで生演奏し、歌う。演奏と歌は土着的、あるいは牧歌的な雰囲気を漂わせ、一行が流れ着いた島の様子や妖精などというモノの雰囲気をうまく表していたと思う。この雰囲気はとても好きだ。

    物語中盤で、ナポリ王の息子とプロスペローの娘が恋仲になるのだが、恋に落ちた2人の、なんとも言えない、(他人から見た)馬鹿さ加減がとてもいい。大げさで歯の浮くような台詞には笑いが起こる。

    先にも書いたが、年配チーム(失礼・笑)の2役の切り替えはさすがだった。酔っぱらいや下卑た様子が、王になるととたんにしゃっきりし、別人のようになる様子がうまいのだ。
    演じることの楽しさのようなものまで感じるほど、嬉々として(特に、酔っぱらいや奴隷など演じるときのほうは、のびのびとして)演じているように見えた。
    妖精役エアリエル(村松立寛さん)も全体のいいアクセントになっていたと思うし、大役をうまくこなしていたと思う。

    シェイクスピアって面白いなぁ、と再確認したような舞台だった。

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    2010/06/11 06:53

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