実演鑑賞
満足度★★★★★
お盆の時期にふさわしい小洒落たファンタジー(メルヘン)である。手が込んでいて、大人もませた子供も楽しめる仕上がりだ。
初めて見る劇団を選ぶときの選択手段に出演者、というのがある。今回はまだ五回目の公演というのにこれだけの顔ぶれが付き合っている。きっと幕内では評判の新人の作・演出なのだろうと観にいった。これが当たり。
いかにも、今風の作らしく登場人物たちは、今風の生活の中で、どこかなじめず、環境からか、自分からか、いつのまにか脱落していった人たちである。夫を事故で亡くし、十歳くらいの息子(小沢が操るパペット)としっかり生きたい池谷のぶえ。自立して生きることに自信はあるが周囲は自他共に信用しない異議他夏葉。発達障害から回復して社会生活が順調にいっていると信じている渡辺りょう。社会から脱落して自分のプラネタリウムを運営しているギタロー。この取り合わせが絶妙で、それぞれのキャラ付けも、台詞もメルヘンにふさわしい。新人らしからぬうまさで今日日あちこちで聞こえる会話が舞台に上げられている。
池谷の人間関係を拡げていく中で、現実からメルヘンへの道筋を作っていく。迷子になった息子をさがすところから、野中のプラネタリウムで星座に対面するところまでの物語の作り方もうまい。子供に母が聞かせた「おとーさんは星座になったの」と言うことを入り口に展開するプラネタリウムの後半は、大胆に採用したプロジェクションマッピングの巧みな技術もあって、小劇場を超えたファンタジー世界が現われる。
注文をつければ物語が甘いのではないかと言うことになるだろうが、夏場にこれだけ行き届いた作品を見せてくれれば、次に大いに期待する、ということになる。しばらく現われなかった加藤拓也の、年は若くないライバルが現われた。
ほじょせきもでて満席。