実演鑑賞
満足度★★★
なぜだろう?LEDやパペットを使った演出は素晴らしいと思ったけど、終盤までどうにも感情移入できずストーリーも腑に落ちず…
しかし渡邊さんのあるセリフからすとーんと腑に落ちて、以降グッときた。
そして池谷のぶえさんは凄い!
実演鑑賞
満足度★★★★
千秋楽当日券で滑り込んだ。耳に心地よい声と滑舌と自在なテンションコントロールの「職人芸」が小沢道成/EPOCHMANのエンタメ性の支柱であった事を久々に思い出した。前に観たのが「鶴かもしれない」OFFOFFバージョン(2016)でなんと7年ぶり。この演目は昨年本多劇場、その前が駅前劇場、その前がOFFOFFだから小劇場出世コースの旅やってるな~と遠く眺めておったが、調べてみるとEPOCHMAN初期の拠点名大前KID AILAKがこの一人芝居の初演で自分はそれを観ていた。OFFOFFで観たのは(珍しく書込みをしていないが)舞台の風景もその時の気分も覚えているので確かだが、KID AILAKの方は書込みが残っているのに全く覚えていない。ただこの公演にいたく感心したからOFFOFFのも観たのだろう(推測)。
EPOCHMANの発祥は、虚構の劇団が年一程度だろうか、時折開催していた俳優による創作発表会に出した作品だったと改めて調べて知った。この発表会は5回目位だったかのを中目黒WOODで一度観たが中々充実した作品群で驚いたものである。小沢氏は恐らく第一、二回あたりで既に独立公演に耐え得る戯曲を書いていたのではないか・・凡そ10年になるEPOCHMANは当初は3~5名規模の芝居を打ち、その後は一人、プラスαといった規模の公演を打ち、コロナ後の21年、22年にも「鶴」以外の作品を出していた。
活動の表面的な一部しか知らなかったEPOCHMAN、。今回久々に「賑やか」と言える俳優連が、集っての群像劇は、趣向たっぷり、叙情たっぷり、機微にも富んだテキストと演出で、シアタートップスという劇場の大きさも最適な舞台であった。
出入りは中央の床に据えられたフタを開閉して行うのみ。舞台は黒い紙質のものを天井から縦に折り目を入れた風合いの壁で囲まれている。そこに星が映し出され、落書きが描かれる。
今作のゲスト的俳優・池谷のぶえ演じる母は、「父を亡くした」息子が自分の世界に籠もりがちなのを持て余していたが、あるとき姿を息子は姿を消し、顔面蒼白となる。心当たりを当たり、息子に会ったと思しき人らの証言を手がかりに、息子を「発見」していく(そこには自分の知らない息子の姿もある)。それを裏付ける息子の本当の声、思考のプロセスと現在地を、ついに目の当たりにする母。なお考え続けている息子がふとある結論に行き当たる瞬間を共にし、二人は出会い直す。
テキストを追う自分としてはドラマ的な停滞を感じる所はあるが、受け入れがたい肉親の死を受け入れる方法を、小さな子どもが(父との流儀に従って)何か科学の謎を解く鍵を発見するときのような作法で見出す顛末は、ドラマの明快なフィニッシュとなっていた。(涙に溺れさせる最終場面はむしろ息子の言葉を淡々と聞くラストであっても良かったようにも。)
実演鑑賞
満足度★★★★★
お盆の時期にふさわしい小洒落たファンタジー(メルヘン)である。手が込んでいて、大人もませた子供も楽しめる仕上がりだ。
初めて見る劇団を選ぶときの選択手段に出演者、というのがある。今回はまだ五回目の公演というのにこれだけの顔ぶれが付き合っている。きっと幕内では評判の新人の作・演出なのだろうと観にいった。これが当たり。
いかにも、今風の作らしく登場人物たちは、今風の生活の中で、どこかなじめず、環境からか、自分からか、いつのまにか脱落していった人たちである。夫を事故で亡くし、十歳くらいの息子(小沢が操るパペット)としっかり生きたい池谷のぶえ。自立して生きることに自信はあるが周囲は自他共に信用しない異議他夏葉。発達障害から回復して社会生活が順調にいっていると信じている渡辺りょう。社会から脱落して自分のプラネタリウムを運営しているギタロー。この取り合わせが絶妙で、それぞれのキャラ付けも、台詞もメルヘンにふさわしい。新人らしからぬうまさで今日日あちこちで聞こえる会話が舞台に上げられている。
池谷の人間関係を拡げていく中で、現実からメルヘンへの道筋を作っていく。迷子になった息子をさがすところから、野中のプラネタリウムで星座に対面するところまでの物語の作り方もうまい。子供に母が聞かせた「おとーさんは星座になったの」と言うことを入り口に展開するプラネタリウムの後半は、大胆に採用したプロジェクションマッピングの巧みな技術もあって、小劇場を超えたファンタジー世界が現われる。
注文をつければ物語が甘いのではないかと言うことになるだろうが、夏場にこれだけ行き届いた作品を見せてくれれば、次に大いに期待する、ということになる。しばらく現われなかった加藤拓也の、年は若くないライバルが現われた。
ほじょせきもでて満席。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/08/03 (木) 19:00
座席1階
「パペットを使い、映像と融合する極上の演劇体験」とチラシにある言葉はその通り。テーマが宇宙だけに、映像表現が極めて有効で、しかも小劇場の舞台にフィットしている。あたかも、プラネタリウムの中で演劇を見ているような、すてきな体験ができる。
物語の主人公は少年の姿をしたパペットだ。今作の作・演出・美術を手がけた「EPOCH MAN」]主宰の小沢道成が主にパペットを操る。お母さん役は池谷のぶえ。ある日この少年が行方不明になってしまうというところから物語は始まる。宇宙や星などが大好きなお父さんが事故で亡くなり、宇宙などについての会話を重ねてきた少年が父親を探して出て行ってしまった、という筋書きだ。お母さんは必死になって、息子を探す。
舞台の床から出てくる役者たちの最初の登場シーンがまるで、宇宙船に乗り込んでくるような感じがする。お母さんはそれほど宇宙に興味はないのだが、父と息子が重ねてきた宇宙についての会話を、息子を探しながら追体験していくような筋立てはとてもユニーク。舞台の三方向の壁に満天の星を映写したり、星座を描き出してみたり。個性的な劇作家小沢が映像の専門家と共に、客席を宇宙空間にいざなう。
「ひとは死んだら星になるの?」。そんな子どもの素朴な疑問文に、舞台は真正面から切り込んでいく。登場人物に斎場で働く男性を入れたのは秀逸だ。人間の死の現実と、本当に宇宙の星になるのかというファンタジーがうまい具合に交錯する。
演技力ぴか一の池谷のぶえや、そのほか小沢を含む4人の俳優たちの切れ味のよい舞台づくりで客席の目をくぎ付けにする。カーテンコールはなかったが、カーテンコールを望むような盛大な拍手が、客席の満足度を表している。