SUN ON THE CEILING@ありがとうございました! 公演情報 劇団マリーシア兄弟「SUN ON THE CEILING@ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/07/30 (日) 13:00

    ダブルキャストの「快晴」チームを拝見。
    従来の「ナチュラルな演技と会話劇」路線は維持しつつ
    客演を多数入れて出演人数も倍増、結果格段にパワーアップしている。
    バラエティに富んだキャラの配置とラストで鮮やかに伏線を回収するところはさすが。
    若干”チカラ技”的なところもあるが、ハッピーエンドの幸福感で楽しかった。
    客演の面々がまた巧いので良い化学反応が起こった感じ。

    ネタバレBOX

    創立80年の総合病院の会議室(休憩室?)が舞台。
    病院は今、創立以来最大の危機に直面している。
    救急搬送されて来た死刑囚の脱走!?
    大物政治家の手術は医療ミスか?
    院長の死は自殺か他殺か?
    そして次期院長にはあのバカ息子がなるのか?

    院長の遺志を尊重するべく奔走する律儀な事務長や
    院長になるつもり満載のバカ息子、
    6人の医師と研修医ひとり、
    そして医療ジャーナリストが、この部屋に集う。

    彼ら一人ひとりが抱える背景に、現代の医療問題が上手く織り込まれている。
    紛争地域での医療活動の限界や、救命救急の現場の厳しさ、
    認知症のこと、子育てのこと、ひとり親のこと、ねじれた恋愛問題・・・。
    病院の中でも外でも、みんなシビアな現実を生きている。

    それら個々の事情をどうやって語らせるか、がいつもマリーシアの腕の見せ所だが
    今回は「空気の読めない天然研修医」を持ってきたところが成功している。
    普通なかなか聞けないことでもストレートに質問してしまう。
    また嫌味のないキャラなんだな、これで話はスピーディーに展開する。

    そしてもうひとり、医師を辞めて医療ジャーナリストになった男。
    この一見クールな男が、実はこのストーリーを回していく重要人物で、
    彼の「真実を知りたい」という情熱がトラブルを解決に向かって転がしていく。
    6人の医師たちが個性豊かで人間味があるところがとても良い。
    過酷な現場で働く彼らは皆、どこか弱くてやさしいところを持っている。
    あのバカ息子でさえ、最後には改心するのだから人は変わるものだ。

    ただこの”改心”の動機が弱いのが残念。
    もう少しバカ息子の心情に時間をかけても良かった気がする。
    一番のトラブルメーカーがラストであっけなく大変身を遂げるのが少し物足りない。
    登場人物の心情に変化が生じる場面は、作品のハイライトのひとつだから。

    客演の方が皆さん巧いので強烈にメリハリがついた。
    いつものマリーシアとはまた違った演出がとても新鮮。
    時には大声でやり合う場面もスッキリしていいなあと思った。
    事務長役の三上潤さん、バカ息子を演じた日下諭さん、振れ幅大きくて素晴らしい。
    ジャーナリスト役の佐々木祐磨さん、膨大な台詞と終盤の涙が強く印象に残る。
    天然研修医役の三原大和さん、あれは素でしょうか(笑)

    この人数にこれだけの豊かなキャラを創り
    問題解決に向けて走らせる脚本の力が素晴らしい。
    演出にスピード感とメリハリがあって舞台がドラマチックになった。
    最後にちらりと大浦さんが登場して嬉しかった。

    劇団は「こどもといっしょ」企画など、やさしい試みも始めている。
    劇場の階段を上がると、赤ちゃんをだっこした女性スタッフさんが
    にこやかに立ってた。
    劇団もメンバーも、作家も作品も、変化し進化していくんだなあ。
    次もその次も、また楽しみにしています!





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    2023/07/30 21:07

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