実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
生と死をテーマにした普遍的な内容で、典型的なヒューマンドラマ。公演の魅力は、主人公の気持の揺らぎ、それを周りの人々の思いや思惑で さらに振幅させ感情を揺さぶる。その一様ではない〈心〉を描いているところ。タイトル「みんなのえほん」は、主人公が絵本作家であること、そして誰のために 何のために描くのかを問うている。
人は平等にサヨナラ=死が訪れる。勿論 自分にも訪れるだろう。しかし、医師から余命宣告をされないかぎり、日々 「命」のことを考えて暮らすだろうか。そんなことをしていたら疲れてしまう。演劇としての面白さ、一方 現実味が伴わないから感情移入できない虚しさ。逆に 周りの生きている人々の本音…余命宣告された人をも利用する打算とエゴにリアリティを感じ怖い。物語では主人公の情報が少なく、周りの人々との会話によって彼女の今が観えるという巧みな展開。
舞台は病院の四人部屋。その入院患者と部屋外の人々(親、夫、幼馴染み、仕事関係者・編集者等)の遣り取りから、病室という特別な空気感…諦念、不自由、遣る瀬なさ等 、一方見舞いに来る人々は自由で野心に溢れている。親や夫にしても、寄り添っているという満足・安堵感が透けて見える。部屋の内外、その狭い広いといった物理的な違いに精神的ー不自由・自由ーな苦痛が観える。狭い世界を破るのは 無限に広がる想像力に外ならない。その結果、壁面へ“世界一優しい絵本”が…。
(上演時間2時間5分 途中休憩なし)