これが戦争だ 公演情報 劇団俳小「これが戦争だ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    アフガニスタン戦争に2002年から2014年まで参加したカナダ軍。タリバンを支援しているパキスタンとの国境に近い南部カンダハール州に派遣された。そこでは子供を使った自爆テロが連日起こり、兵隊の精神は壊れていく。

    部下思いだが女癖の悪いスティーブン・ヒューズ軍曹は北郷(ほんごう)良氏。KENTA風味の保阪尚希っぽい色男。
    作家が自身を投影しているような女兵士、ターニャ・ヤングは蜂谷眞未さん。何となく吉野公佳っぼい妖艶さ。
    直情的なガキ、田舎者の新兵・ジョニー・ヘンダーソンは遊佐明史(あきふみ)氏。ジャルジャルの後藤淳平っぽい。彼の起伏の激しい感情表現が今作の肝。MVP。
    軍医クリス・アンダースは大川原直太氏。西田良と泉谷しげるを足したような渋味。

    帰国してインタビューを受ける軍人達。あの日アフガニスタンのカンダハールで何が起きたのか?皆がその日をその前夜を現地に到着した日のことを思い出す。口にはしない個人的な出来事の数々。煙草とポーカー、やたらキスシーンがある。

    ネタバレBOX

    正直、良い作品とは思わない。
    アフガニスタン政府軍が水攻めでカンダハールのタリバン塹壕を攻撃、100人以上溺死させた。
    この非人道的な作戦を止められなかったカナダ軍兵士達の葛藤。モデルになった事件があったのかも知れない。

    その日、ターニャはジョニーとの喧嘩で基地に待機させられる。連れて来られた腹を裂かれた地元の少年を救急ヘリに乗せようと基地と交渉。何とか成功させる。
    ジョニーは少年兵の自爆テロに遭って大怪我。
    軍曹は救急ヘリを待つがターニャがヘリを使用してしまった為か、全然やって来ない。アフガニスタン軍の軍事行動を横目で見ながらもそれどころじゃない。
    軍医は数日後、その現場で腐った死体の山を見ただけ。

    登場人物とこの事件はほぼ関係していない。この事件についてのインタビューを重ねる内に封印された真実が暴かれる訳でもない。酷く残酷な事件について聞かれながら、彼等が思い出すのは刹那的な男女関係や不安や焦燥、心の奥底で求めていた安らぎについて。(多分それが作家の狙いだろう。彼等の共有していた“ある種の感覚”を作品化すること。その為のキス)。『これが戦争だ』とは思わない。せめて隠していた心の暗部を、どうしても隠さなければならなかった心の闇を、物語に込めて欲しかった。

    戦争を皆勘違いしている。日本の歴史では、勝った戦争(日清日露)は良い戦争で、負けた戦争(日中、大東亜)は悪い戦争。敗戦後すぐに朝鮮戦争で大儲けして国を建て直した事実。(唯一、原爆だけは想像を絶する破壊力で人間の憎悪すら吹っ飛ばしてしまった。人間対人間を超えて神の意志、啓示すら感じさせるもの。この先はもうこれ以上ないと実感させた)。

    戦争はいけないが戦争に至るまでの暴力は肯定するのか?紛争ならいいのか、事変なら?日本が中国に攻め入った流れも、ほぼ今回のロシア・ウクライナと同じ。正当化正当化正当化。現地の日本租界を守る為。中国軍によるテロを鎮圧する為。自作自演の偽旗作戦。アジアを欧米支配から解放させる為。今のロシアは核兵器を持った大日本帝国だ。どんなオチになるかは日本人なら分かっている。

    家に強盗が入って力尽くで追い出そうとする。それが戦争。警察(国連)に助けを呼んでも静観され、「遺憾の意を表する」だけ。やらなければやられる。負ければ家は乗っ取られる。暴力に暴力で立ち向かえば「戦争はいけない」なんてなじられる。一体どうすればいいのか?

    “警察”として介入する戦争もいけないのか?ホロコーストを行なっている国への介入も?ノルマンディー上陸作戦も?日本のように金だけ出して他の国の連中にやらせればいいのか?

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    2023/07/24 14:38

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