そこに在るはずの貴方に 公演情報 FUTURE EMOTION「そこに在るはずの貴方に」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    韓国と日本に共通した説話である「牽牛と織姫」(七夕物語)を題材に様々な観点からアプローチし、一つの作品を共同創作するプロジェクト。その志に敬意を表する。
    物語は一般的に知られた内容で、Wikipedia等で知ることが出来る。その七夕伝説を現代に生きる若者…彦星と織姫の星座を持って生まれた転生者に重ねて綴る。

    全体的に<美しくまとめた>といった印象の物語。韓日の役者は夫々2名…彦星と織姫を韓国の役者、鵲と烏を日本の役者が演じ、夫々 説話(物語)とパフォーマンスという役割を担っていたようだ。その付かず離れずといった空気感・距離感、そして ふわふわとした感じが、いかにも実体のない伝説らしい。気になったのが、韓国の役者は二人とも裸足、日本の役者は黒靴下で足下が違う。彦星と織姫という星座…宇宙〈天空〉という意味合いでは裸足なのかもしれないが、あくまで物語は転生者に重ねており実体〈人物〉を描く。何故ならば、二人は交わることなく街を歩き、雨が降り出したことで運命的に出会うのだから。

    音響は ピアノをずっと弾き、照明は 鵲と烏の羽ばたく姿〈パフォーマンス〉を壁に陰影する。因みに、鵲と烏の違いを白と黒の衣裳で表し、後壁一面に赤い紐を張り巡らし、運命の赤い糸を示す。観せる工夫をしているが、全体的に淡々・粛々と展開するためメリハリが感じられず、印象が薄くなったのが惜しい。
    (上演時間55分) 

    ネタバレBOX

    素舞台、一人の男と旅行者らしき女がバス停で出会い、雨が降り出し男(キム・ギョンファンさん)が女(チェ・ソンファさん)に傘を翳す。二人とも裸足で 街中を歩くには不自然だ。

    物語は、現実(2023年)の二人の出会いと七夕伝説を交差させ、遥か彼方の彦星と織姫を現代に甦らせる。七夕伝説の知られた概要…織姫は神様の着物を織る仕事をしており、神様が織姫に婿を探す。そして天の川の対岸で牛の世話をしている彦星を会わす。二人は結婚して仲睦まじく暮らすが、全く仕事をしなくなる。神様は織姫と彦星を引き離し、二人は離れた悲しみで仕事をせず毎日泣き暮らす。神様は「真面目に働くのなら、毎年7月7日だけは、ふたりを会わせる」と約束する、というもの。公演はこの伝説をパントマイム等で表現し挿入する。伝説<非現実> と 烏・鵲<飛翔>、その浮遊感がファンタジーのように観える。

    現実と伝説を結ぶ役を烏と鵲に担わせる。物語は韓国俳優が演じているが台詞は少なく、発する言語は韓国語、一方 烏と鵲は異世界を往還し虚実の橋渡しをする。七夕伝説、知っているようで知らない物語でもある。七夕伝説を韓国と日本に置き換えたとき、隣国でありながら知らないことも、そして両国の間には天<空>の川ならぬ海がある。何となく「七夕伝説」を題材にした意図が分かるような気がする。

    この公演、物理的な橋ではないが 演劇という創作作業を通して<架け橋>を築いたような。このような試みは、継続してこそ<力>を発揮するだろう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/07/08 15:44

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