満足度★★★★
あまりにも切ない
自分の場合、この作品を観ると決めたきっかけは松本紀保が出演するからで、こういう小劇場でどんな役を演じるのかとても興味があったからです。
観終わっての感想はひとことで言えば本当に素晴らしい作品でした。あまりにも切なすぎます。人物描写が丁寧で、きれいごとでなく説得力がある。
私はこの作品を観て、改めて2月のモダンスイマーズの公演「凡骨タウン」の冒頭の独白を思い出した。「自分ならこんなことはしないだろう」と言うのは簡単だが、実際、その人間とまったく同じ人間に生まれていたなら、
同じ行動しかとれないのだ、という意味のあの台詞。「凡骨タウン」もかなり悲惨な話だけれど、これもかなり辛い物語です。しかいこういう社会の吹き溜まりに生きる弱者にスポットを当てて、書いていくって凄いなあと自分などは単純に感動してしまいました。
彼らのしていることは犯罪だし、決して褒められた生き方ではないのだけれど、強く心を揺り動かされた。
中島新さんの今回のお芝居は山本周五郎の世界に通じるものがある。
2010/06/04 09:01
2010/06/04 00:17
大幅に遅いレビューにコメントをいただき恐縮です。tetorapackさまやみささまがいつもながらすばらしいレビューを早期にお書きになっているので、私はあまり書くことがなくて、ちょっと困ってしまいました(笑)。
夫が、「終演後、紀保さんが小劇場の俳優さんのように出てきて談笑してるのが印象的だった。小劇場系の芝居に大劇場に出演してるような俳優さんが客演する場合、ロビーに出てこないことが普通ですものね。彼女は演劇プロデューサーの仕事も勉強してるから高麗屋ファミリーの中では異色の人なのかも」と話していました。
新派は低迷や危機が言われて久しいです。そのつど歌舞伎の花形役者を客演に招いて観客動員をはかってきましたが、最近はそれも少ない。歌舞伎が隆盛で公演が詰まっているという理由もあるでしょう。本来なら人気の海老蔵や菊之助が出ても当然なんですけどね。
新派のスターは、故・市川翠扇、波野久里子、当代の水谷八重子と、みなさん、梨園の令嬢ですから、ここは紀保さんに入ってもらうのも一案なんですよね。
これは「麦の穂・・・」のところにも書くつもりですが、文学座の戌井市郎さんも新派の重鎮喜多村緑郎のご子息で新派の演出も手がけておられ、紀保さんも平田オリザ作品に似合いそうな女優なので、新派に平田オリザさんが新作を書き下ろしてくれないかな、と。それに紀保さんが出たら、いいな、と。私が松竹の制作にいたら、動きますけどねぇ(笑)。かつて先代の幸四郎は文学座の公演「花の御所始末」に主演してますしね。