或る女 公演情報 演劇企画集団THE・ガジラ「或る女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    戦前の現代文学はほとんど漱石独り占め、宮沢賢治少々、という状況だが、こんな何度も映画化された素晴らしいファムファタール・モノがあることをすっかり忘れていた。鐘下辰男の脚本は実にうまい。複雑なスジを男(千葉哲也)と女(守屋百子)の流転の悪女モノにまとめ切った。例によって、観客を真っ暗な劇場の別世界へ連れて行き、ドカンドカンと大音響、良いところで宗教音楽で泣かせる、という演出も健在で、二幕3時間。夜の公演だったらバスもなくなって、目白まで歩き、さらにその先は銘々観客のご勝手だが、それでも、芝居好きには是非おすすめの舞台である。客席たった35席。珍しく中年を主に男性客の方が多い。
    こう言う劇場環境で、よく千葉哲也付き合った。こういうところはやはり昔のガジラでの縁が生きていた。ガジラには女優がいなかったのがこう言う場合に致命傷になる。
    女は三時間ほぼ出ずっぱり、妖婦の多面性を演じるのは誰がやっても難しい。よく頑張り抜いたこの女優さんには酷だけど、ここは、芝居好きはそれぞれご贔屓の女優を思い浮かべて楽しめば良い。それほど、芝居になっているのである(私なら、秋山奈津子)。
    原作は五十年ほど前、読んだ記憶があって、文学全集を引っ張り出してみたら、やはり、古色騒然の戦前文学である。芝居で生き返ったのである。こういう戦前文学は大衆文学は時折昼メロの原作になるが、一応文学とされている作品にも今劇化して面白い作品があるかも知れない。ここは鐘下の慧眼に★。後は、こう言う芝居せめて俳優座クラスの劇場公演にグレードアップしてみてみたいモノである。

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    2023/07/06 10:12

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