瀬戸内の小さな蟲使い 公演情報 桃尻犬「瀬戸内の小さな蟲使い」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い!
    究極の状況下、人の本音と他人のコトが気になる、その面白可笑しい会話劇。よくよく考えたら物凄く怖いのに、何故だかニヤニヤ笑ってしまう不謹慎さ。現実は、他人の不幸は蜜の味 どころではない 玉の汗だろう。おぉ、これが「見た人もストレスが発散できるお芝居」という謳い文句か。
    シンプルな舞台装置だが、状況設定を端的に表しており見事。

    役者の演技というか、表情の変化が情況を如実に表している。冒頭の二人芝居…刻々と変わる心境、いつの間にか他人が絡み…興味本位の詮索と遠慮ない言葉(意見)が何とも辛口。絶妙な会話のセンスとテンポが物語の肝。

    ラスト、少し時間軸をズラして表出した「蟲使い」、何とも言えないシュールさ。その無言の光景は滑稽であるが、同時に不気味で怖い。
    (上演時間1時間25分)

    ネタバレBOX

    ボックスを連結し、それを縦組みすることでフリーフォールを表す。男女2人が夫々そこに腰かけているが、地上50㍍のところで止まって5時間が経過する。兵庫県にあるあまり有名ではない遊園地、身動きが取れず恐怖と苛立ちがピークに…。簡易な舞台装置ながら、そのリアルな状況が目に浮かぶ。

    東京で同棲していた道夫(鈴鹿通儀サン)と宮崎(片桐美穂サン)、道夫は「蟲使い」の跡を継ぐため地元の兵庫県へ帰るが、宮崎にも一緒に行って欲しいという。喜ぶ宮崎だが、実は「結婚はしない」と明言される。同棲⇒一緒に行って欲しい⇒結婚というパターンを想定していたが、何となく裏切られた気持が 今の状況を一層険悪にさせている。
    途中から登場する関西弁で喋る中年?女性2人ーまゆ(橋爪未萠里サン)咲(中尾ちひろサン)、同じような状況下にある。することもなく暇つぶしに2人の会話に勝手に入ってくる。2人だけの世界から第三者という世間が闖入してくる面白さ、同時に関西弁という特徴を活かした鬱陶しい存在を介在させることで 感情的な話が苦笑 婉曲へ、この会話の展開が実に巧い。因みに地上でオロオロする作業員・山本(伊与勢我無サン)との空中・地上という目線合わせも巧み。ここまでが第1部「フリーフォール編」。

    場面が変わり、「第二部 虫偏」…遊園地の機械作業員・花房ともき(野田慈伸サン)とフリーフォール編に登場した最後の1人ーマエダ(てっぺい右利き サン)が小人化した。タバコ箱や五百円硬貨を用い如何に小さいか表す。これは「蟲使い」の呪術か幻覚・幻想か、奇妙な世界観へ誘われる。そして遊園地の出来事から3年が経ち、宮崎は結婚し 道夫は相変わらず煮え切らない。現実と夢想といった相容れない世界観…そして道夫の傍に蟲の形をしたマエダの姿。

    公演の魅力はフリーフォールの停止事故、無さそうで有り得る設定を巧く使い、人の本性を巧みに描き出す。同時に「蟲使い」という怪しげな言葉と職業が不穏さを表す。ブラックな笑いを入れつつ、話がどう絡み合い 物語が展開していくのか関心と興味を惹く。勿論 役者の面白キャラが物語の芯をしっかり支えており、演劇という異世界をたっぷりと味わわせてくれた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/06/25 17:20

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