実演鑑賞
満足度★★★★
〈空チーム〉
長谷川伸の股旅モノのようにこの手の昭和スター誕生モノも古典として残っていくと思う。松竹の木下惠介、山田洋次ラインの懐かしき喜劇映画の残像。併映向きの見事な小品。戦後の貧乏長屋からSKD(松竹歌劇団)に憧れる鳩の街(赤線地帯=売春区域)の少女達。若き倍賞千恵子の姿がうっすら見えた。
かつて木の実ナナの運転手を務めた手島昭一氏がプロデューサー。木の実ナナのエッセイから創作しているが、かなり脚本家のオリジナルらしい。
木の実ナナ、本名・池田鞠子。作中ではマリーなんて呼ばれている。演ずるは空みれいさん。観月ありさに百田夏菜子を掛け合わせたような圧倒的なスター性。素材はパーフェクト、あとは周囲の才覚と運。小劇場からスーパースターを送り出して欲しい。
心を打たれたのは親友役の大淵心実(おおぶちここみ)さん、13歳!流石の劇団ひまわり、作品の血肉と化す。助演女優賞モノ。
父親役の小磯勝弥氏は長塚圭史っぽい。
母親役の富山智帆さんの痛い台詞。
遊び人の叔父役は小笠原游大(ゆうだい)氏。阿部サダヲっぽい憎めないキャラでこの作品世界の手触りを肉付ける。彼の存在感のリアルさが今作の一つのくさび。
遊女達の艶やかな美しさ。でく田ともみさん、大和田紗希さん、橘芳奈(かんな)さん。
学習院ひろせ氏は独り飛龍革命を披露。ユリオカ超特Qか?
高橋ひろし氏のエスパニョール・キャラも重要。
いじめっ子、相星功生(あいぼしこうき)氏のエピソードも胸を打つ。
退屈させないようにシーン繋ぎを工夫したリズミカルな演出が心地良い。複雑に交差した時間軸も悪くない。
ダンス・シーンがかなりハッピーなので、これぞ木の実ナナっぽい。全ての痛みと苦しみを抱えて笑顔で踊る。
テーマはエンターテインメントの孤独と見えない絆。
現実逃避の夢で現実から逃げられた者と逃げられなかった者。
大屋海さんヴァージョンも気になる。