独りの国のアリス〜むかし、むかし、私はアリスだった……〜 公演情報 ことのはbox「独りの国のアリス〜むかし、むかし、私はアリスだった……〜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、自分好み。
    ファンタジーにしてラビリンスといった感覚であるが、まったくの浮遊感という訳ではなく、何となく地に足がついて といった絶妙感が好い。タイトル「独りの国のアリス〜むかし、むかし、私はアリスだった」は「不思議の国のアリス」を意識、そのメルヘン的な雰囲気を 少女ならぬ現代の中年女性の心の彷徨として描いている。

    劇団遊◎機械(ゆうきかい)/全自動シアターが1995年(28年前)に初演、確か岸田國士戯曲賞の候補作品にもなったと思うが、今 観ても独特の世界観に浸れ楽しめる。いや 現代風にアレンジしているといったほうが正しいか。

    舞台美術は女性の心模様を巧く表しており、アタシ(アリス)の荒廃した気持を的確に表出している。どちらかと言えば都会的なセンス、一見スタイリッシュと思える光景が次々と変化していく。ここは…そこは何処といった自分の居場所が定まらないといった空虚さが堪らなく切ない。

    卑小だが、<Team葉>初日ということもあるのだろう、少し演技が硬い。台詞の噛み 言い直し、肩を組んで踊るシーンも少し揃(合)わない。しかし公演回数を経れば改善するだろう。それよりも物語を牽引する不思議な力(チカラ)、アリスの孤独と彼女を取り巻く<奇妙な>人々の陽気さ、そのアンバランスというか雑多さが現実と虚構(虚空)綯交ぜの世界観を立ち上げる。今まで観てきた<ことのはbox>公演とは一味違った面白味がある。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)【Team葉】

    ネタバレBOX

    舞台美術、上手に階段(雑多な物で上れない)、壁にはレース生地 白、階段下にテーブルと椅子1脚、床にも衣類やペットボトルが散乱している。奥壁には動かない時計、天井には斜めに吊るされたシャンデリア、下手にカウンターとハイスツール。周りの壁には蔦類が垂れ下がり。アリスの心の荒廃を表すような雑多さと真ん中には何も無い空虚さが同居したような光景(世界)。前に進めず止まっている姿であろう。
    その後、場面に応じてテーブルや椅子を搬入搬出させ情景を作り出す。因みにテーブルや椅子の形状が異なり、そこにも個性(奇妙な人々の印象)が散りばめられている。

    間違い電話が何度か鳴り、苛立つアリス。今日は誕生日だが、一人で過ごしている。そんな彼女のところに 陽気に騒ぐ奇妙な人々が現れ、アリスの心の内を嘲るような振る舞いをしだす。何時しか10歳の誕生日シーンへ。母はいないが、父をはじめ親戚の人々が誕生日を祝ってくれる。ケーキの蝋燭、その火を吹き消すと大切な人がいなくなる。誕生日毎に1人また1人と ワタシのもとを去っていく。それが怖い。幸せになる前に自分で<幸せ>を壊してしまい、辛い思いをしないように現実逃避する。いつの間にか自分の周りには誰もいなくなり孤独が…。

    奇妙な人々によって、こんな人生もあるのでは、といった楽しいシミュレーション人生が展開していく。現実/空想の世界なのか、その迷宮にして混沌とした世界観が実によく表れている。それは外見の衣裳…アリスは地味な服、奇妙な人々の衣装はトランプ柄など奇抜で明彩色の服で 居る世界が違うような。そして表情の陰(鬱)・陽(気)にも表れている。アリス(花房里枝サン)は勿論、奇妙な人々の演技は熱演、ぜひ千穐楽まで持続させてほしい。

    時間は<無限>にあるわけではない。人生は色々なことを考えて選択する、が 考え過ぎて行動が出来ない。子供の頃からの誕生日の悪い思い出、現実逃避し(自己)殻への閉籠りなど、自分自身に向き合えていないアタシ。そのアリスの合わせ鏡のようにして現れる奇妙な人々の個性溢れる魅力。勿論 歌い(ケセラセラ等)踊るという観せる演出が魅力を支えている。
    この世界観は、期待を裏切ることなく、カーテンコール後のアリス(姿)でしっかり表(明か)す。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/06/16 12:13

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