ホテル・ミラクルThe Final 公演情報 feblaboプロデュース「ホテル・ミラクルThe Final」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。〈R15指定〉
    「ホテル・ミラクル」シリーズは、このThe Finalを含めて全8回、うち6回観ることが出来た。逆に言えば観れなかった第1回と第3回が悔やまれる。

    新宿歌舞伎町という歓楽街にあるホテル・ミラクルの一室で繰り広げられる痴態を覗くような感覚 いや官能公演。室内で起こる男女の濃密な痴話を通して人間の、それも身の下相談を見聞きするような面白さ。勿論 隠微な感じはするが、全編を通じて「男・女」というよりは「人・間」の本音、心情が奇妙な感覚を以って迫ってくる。妖しい官能マジック、それは脳を刺激し胸底にある禁断の欲望、いや人間の本性を曝け出させるような心理プレー。

    過去シリーズで上演した作品もあれば、新作もあり この間の社会事情・世相の変化も織り込み、変わらぬ男女の<恋愛・痴話>物語もあれば、移ろいゆく心の変化などが紡がれる。色々な男女 いや人間関係を濃密に描き、本来は人に知られたくない くらくらするような短編。もう観られなくなると思うと コトが終わったような虚しさ寂しさが…。

    ちなみに 今回観た作品の1つ、その脚本家と帰りがけ話をしたが、役者によって作品イメージが変わる と。自分も前に観た時と印象が異なり、やはり舞台は<生>ものということを改めて認識。
    繰り返すが、あ~ 1回と3回が…。<「ホテル・ミラクルThe Final」見逃がし厳禁>かもね。
    (上演時間2時間40分 途中休憩あり)【REST ver】

    ネタバレBOX

    入口側に磨ガラスのシャワールーム。舞台美術は、壁際にミニテーブルと椅子2脚。中央にベット、サイドテーブル、ソファーが置かれている。テーブル・ソファ下の照明が室内を妖しく(ピンクに)照らす。
    客席はL字型。ベットを横から、そしてシャワールームで着替える姿を観るには、奥角の席に座る方が観やすいだろう。どの方向からから観るかは好みであるが。
    前説「おし問答」(坂本七秋 氏)は男女がシャワールームで交わす会話…携帯電話電源off、飲食禁止など、喘ぎ声での注意喚起。既に始まっているので、トイレは我慢するようなプレイだが…。

    ①「シェヘラザード」(窪寺奈々瀬)
    何でも話し合う親しい関係の女性2人、新堂沙良は大物議員の娘でお嬢様的な存在。恋人と別れ すぐ職場の先輩張本信也とラブホへ。そんな話を聞かされる大貫亜希子だが、彼女の恋人と言うのが…。恋人 以上と未満は肉体関係の有無だろうか、と意味深さを問うような。

    ②「よるをこめて」(笠浦静花)
    清原凪子と藤原行成は係長と主任という上司部下の関係の恋人。社内には秘密にしている。最近はセックスレスで諍いが絶えない。冷静に話すために第三者を、それを平社員 関泰一をラブホに来させて。社内的な立場が歪になり奇妙な会話が漂流し出し、どこに辿り着くのか興味を惹く巧さ。

    ③「きゅうじっぷんさんまんえん」(屋代秀樹)
    レズビアン風俗の話。ぎこちない女性2人の会話と動き。風俗嬢というには あまりにウブで不器用な仕草、そして卑下し続ける風俗嬢を慰める客。シャワールームに一人ずつ入って気を落ち着かせて…ラストの客の一言が切ないような(世間的に見れば幸せなのだが)。

    ④「グリーブランド」(河西裕介)
    酔い潰れた女とラブホで一夜を過ごすが...。ヤるチャンスがあったのに行為をしない男に向って女は、明日遠くへ行くという。それはグリーブランド...それってどこにある国なの。女の誘惑にも優柔不断な態度の男。親しくなり過ぎて、もはや男と女という異性を乗り越えた友達・同士といった間柄。そのラフさが可笑しくも切ない。

    ⑤「獣、あるいは、近付くのが早過ぎる」 (服部紘二)
    アレは姿を現した。 ゆっくりとその首をもたげる中、新宿歌舞伎町のホテル街で、男 村田ケンジは年上女 早瀬マナミをホテルに誘う。 不可解な足音が鳴り響く中...草食系男子も目覚めるか。この街はおろかこの世の終焉のような雰囲気、それでも男は踏ん切りがつけられない。

    部屋に入ってからの、男性、女性の振る舞い、落ち着かなさ、照れと恥じらい...など雰囲気のエロ、妖しさと挙動のコミカルさのアンバランスも有りがちで笑える。そして、実際は密室で濃蜜な場所、そんな淫靡な処を覗いている。普段そんなことが出来ない非日常性と背徳感が高揚させる。その生身の人間...男女を感じさせる脚本・演出はそれぞれ面白い。ラブホテルという部屋のシチュエーションでありながら、やはり脚本家の感性というか描き方の特長が出るようで、一袋に色々な飴が入っており、違う味(甘いだけではない)が楽しめる、そんな公演であった。

    どの物語にもクスッと笑えるオチがある。全作品にラブホという少し妖しげな雰囲気の中で、男女の距離感が伸び縮みする。また話を適度にねじり、巧みに流れに渦を作り掻き回す。室内の濃密な関係が、軽快なテンポで繰り広げられる。構成の絶妙さ、脚本の内容を斟酌した上でのアンバランスな演出(池田智哉サン)がたまらない。
    これが最後の公演だと思うと残念でならない。

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    2023/06/15 15:35

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