実演鑑賞
満足度★★★★
冒頭、一人のサラリーマンが二つの家族の「お父さん」を同時にやっていて、おやッと思った。気持ち悪いほど仲の良い「家族」はネットの疑似家族で、隙間風の吹いているのがリアルの家族(舞台ではそれを同じ空間で別俳優が同時に演じる)と分かってきて、題名の意味も分かってがぜん面白くなる。そして、「お父さん」が殺される。(この場面は一瞬だが、迫力ある)
以下、殺人事件の真相究明となるのだが、取調室と、マジックミラー越しの別室と、過去のネット家族たちと、取り残されたリアルお母さんと、最大4つの出来事を、同時に舞台上で演じさせる。こうした時空間の処理は見事。同じ場面を巻き戻して別角度から見たり、演劇的想像力を喚起される。
高校生16歳の娘役の川畑光瑠が、本当の高校生のようだった。イラついたり、落ち込んだり、不機嫌だったりが、思春期らしい不安定さをよく出していた。リアルお母さんの小林桃子の弱い女の底の強さ、ネット娘の東史子の強気の裏の寂しさ、人恋しさも、それぞれよく出ていた。