実演鑑賞
満足度★★★★
抽象的な世界を芝居にする面白さにかけては、この作家はなかなかうまい。アングラ時代からこの一派は腕を挙げてきて、北村想などから出発して次世代の岩松了、前川知大、新しいところでは、加藤拓也や岡田利規にまで一つの大きな流れを作っている。素材の劇的要素を考えて構成しているので破綻しにくい。
このドラマの主人公は森の中に出家してグループの指導者になっている兄(今井朋彦、ぴったし)と、そこでゾンビ映画の撮影にやってきた弟(配役表がないので不詳・これが兄と対照的でうまい)が、現代の「神」(生きていく指針)を探すという枠取りで、話の展開では映画の中の主人公の父母(この二人もうまいが不詳)のゾンビが出てきたり、殺人事件が起きたり、する。
美術が洒落ているのはいつものことだが、天井から細い電線が伸びている森の木の切り株を散らした裸舞台を森を思わせるカーテンが囲っている。
二時間ちょっとだが、冒頭の抽象論が少しダレる。もっと入っても良いと思うが、硬派に舞台が進んでいくところが若い人を遠ざけているのかも知れない。大人の客が多い。