実演鑑賞
満足度★★★★
避けて通れない現実の澱のようなものが無限に込められた、まさしく「風景」劇。
祖父の葬儀に親戚が集まり、それぞれの近況などを語り合う光景が淡々と紡がれ…。劇の特徴は 全編茨城弁で、必ず相づちか同意を求めるかのような その繰り返しの ゆったりとした間(ま)と 伏し目がちに遠くを見るような表情。一見 無感情・無表情のように思えるが、話の内容は結婚・出産・子育て・跡継ぎ・老後、そして老親の面倒を誰がみるか、といった暮らしに付きまとうもの(普通の「風景」)。
必ずしも欲深い、遺産相続的なものではないが 心の奥を抉るような不気味さを感じる。喪主を父か叔父、その兄弟のどちらが務めるか。結局 親の面倒を見てきた弟の叔父が務め、遺品の整理(処分)まで行う。親戚の中には、高価なモノはいらないが、せめて思い出となる形見分けはしてほしかった と呟く。
何年後かの 墓参り。喪主を務めた叔父は、親戚が参るであろう盆の日に行かない。会う気まずさより、孤独を選ぶといった頑なさ。墓参りに行かなくても、心の中では いつも思い出している、と強がりを言う。家族・親族といっても だんだんと疎遠になっていく寂しさ。何か(大きな)出来事が起きるわけでもなく、淡々と過ぎ行く日々が…。
(上演時間2時間10分 途中休憩なし)