2010億光年 公演情報 サスペンデッズ「2010億光年」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    静謐な、情感劇の秀作
    本当に、いつも思うのですが、早船さんて、どうしてこんなに女心がおわかりなんでしょう?
    淡々としたストーリー展開の中に、はっとするような珠玉の台詞やシーンが散りばめられて、上質な大人の芝居を、充分味わわせて頂きました。
    早船さんが、役者さんそれぞれに、思いを込めて、戯曲を書いていらっしゃるのだなあということも、観ていてジワジワ伝わって来ます。
    この作品を観て、眠くなってしまうタイプの男性は、きっと彼女の女心は、ちっとも理解できないタイプなんじゃないかなと思いました。
    我が家の夫なら、きっと最初から最後まで、眠っていそうです。(笑)

    作品にも、役者さんにも、大満足ではありましたが、どうも芸劇は、この劇団には広すぎる空間ではと思いました。こういう、芝居は、もっと狭い濃密な劇場空間で観たい気がします。
    冒頭のシーンでは、役者さんの台詞が割れてしまうのか、聞き辛い箇所がずいぶんありました。これも劇場の問題かもしれません。

    ネタバレBOX

    リルケの詩集からの劇中劇部分の本番シーンの演出が、実に秀逸でした。
    シェークスピアの「真夏の世の夢」にも、本編とは関係ない役者の稽古シーンが挿入されますが、これも、そんな味わい。稽古では、こんなダサい芝居観たくないと思わせて、本番はこんなにレベルアップしてしまうのかと、作者早船さんの粋な目論見に、思わず唸りました。

    ギャラリーオーナーの弟が、「写真も絵も演劇も、人をシアワセにはしない」という内容の台詞を言いますが、早船さんは、この芝居で、いや少しだけでも、演劇は人をシアワセにしたり、浄化したりするよという、内心のメッセージを、私達観客に届けて下さったのではという気がしています。
    粗筋で説明したら、陳腐になりそうですが、この登場人物は、皆リアルでした。私の嫌いなタイプの「静かな演劇」とは全然違います。 

    SMクラブの男が、尋ねてきた絵里が料理すると言った時に発する一言「から揚げ作ってね」。この一言だけで、いつも、目の見えない彼女を気遣って、好きなから揚げを我慢している、2人の生活を瞬時に観客に想起させます。
    この芝居で描かれていない日常の登場人物の有り様がリアルに伝わる…。 

    夫が長い撮影旅行に行こうとする時、出社前の妻が、昔似合ったミニスカート姿を見せながら、「急に似合わなくなる時を一緒に目撃したい」という時の、切ないまでの女心…

    あー、何て素敵な心象描写の数々!!!

    枚挙に暇がないけれど、本当に、珠玉の作品世界でした。

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    2010/05/26 03:10

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