Wの非劇 公演情報 劇団チャリT企画「Wの非劇」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    性加害の問題を明るい笑いに変えて批判する。とにかく面白い。冒頭から超スピーディな場面転換で、若手大物監督(みずき)による新人女優(小関千尋)に対する性加害の問題と、それをめぐって泣き寝入りか告発するか、女優の事務所関係者の利害も絡んで右往左往する。人権と正義より利害と打算で動く人間の姿に、笑いながら身につまされる。

    若手大物監督の所属する芸能プロが「ジョニー」で、社長はジョニー北澤(市原一平)。ジャニーズJrならぬジョニーブラザーズがステージの練習に流れるのが、性被害を実名で告発したカウアン・オカモトの曲。モデルは明らかで、ちくりとした風刺に客席からもたびたび笑いが起きる。ジョニー北澤が姉の会長(山本陽子)と、監督の性加害疑惑のもみ消しを図りつつ、若いブラザーたちを「合宿所」に呼び出す…。ここらへんから今日ただ今の問題の核心にせまっていく。

    ネットの投降者たちも2回ほど出てきて、彼らの心ない言葉が登場人物を苦しめる。現代がネット社会であることもきちんと表現している。
    濃い内容を、なりふり構わぬスピード重視でコンパクトな舞台に。95分休憩なし。

    ネタバレBOX

    ジョニー事務所が被害を訴えた女優の過去を洗ううち、意外な事実がわかって、問題が過去のいじめ加害になっていく。ここでAIが書いた映画脚本がネタとして使われているところ、ジャニー〇〇の性加害同様、今この時の話題を瞬時に拾うセンスはさすがだ。性被害を訴えた女優が、実はかつていじめで同級生を自殺に追い込んでいたという展開は、恐るべき発想。それで女優は逆に追い詰められてしまう。

    あれっ、性暴力はどうなるの?と思っていると、芝居ならではの飛躍とドタバタで、問題は再び性暴力に戻り、意外な結末をつける。アッと驚くアクロバットである。「セーラー服と機関銃」の薬師丸ひろ子(神野千愛)も出てきて、笑わせられた。

    「非劇」とは劇にあらず。心無い現実である、という意味。うまいタイトルである

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    2023/05/20 12:08

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