しあわせのかたち 公演情報 藤原たまえプロデュース「しあわせのかたち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    表層的には、早とちり勘違いで面白可笑しく観せるが、その奥には人の優しさ寂しさが 滲み出るような人間劇<または家族劇>を描いている。ホームドラマの中に独居老人の悲哀を落とし込み、笑いと泣き という感情を揺さぶる、これが実に上手い。物語は地方都市、それもシャッター通り商店街を連想させるから、家族の繋がりと同時に地域社会との関りが浮き彫りになる。

    キャストは個性豊かなキャラクターを立ち上げ、それぞれの立場と状況をサラッと説明していく。いかにも居そうな設定、それが観客に寄り添い共感を誘っている。この物語で重要な役割を果たしているのが、舞台美術と食事(シーン)であろう。親も子も一人の人間…それぞれの生き方があり、幸せの考え方や求め方も違う。そんなことは当たり前なのだが、しかし 家族ゆえに一層切ない思いが…。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、ダイニングとリビングの続き部屋(空間)。テーブルと椅子、座卓やソファ、小物が置かれ生活感を漂わせる。
    冒頭、後継ぎがいなく近所の店が閉店し、といった話で地方の寂れ(シャッター通り商店街)、独居老人の問題をそれとなく描く。そこに都会で暮らす子供(4兄弟妹)たちとの距離感を表す。それは単なる地理的な問題ではなく、心の距離といったことを暗示している。

    父が亡くなり、最近 母の様子がおかしく、年下の恋人ができたらしいと…。子供たちは、今さら再婚でもない、財産目当てか など勝手な憶測をし、久しぶりに実家に集まる。偶然、末妹の結婚相手が実家へ挨拶に来ており、あぁ勘違いから起こる家族内騒動。誤解するようなシチュエーション、チグハグな会話が面白可笑しく、その度に場内から笑いがおきる。前半のコミカルさが、後半のシリアスさを強調していくという絶妙な描き方。

    夫々の家庭の事情や思惑が錯綜し、幼かった頃のように家族団欒といった楽しい雰囲気にはならない。一見身勝手のように思えるが、子供たちも結婚し どこにでもありそうな事情を丁寧に描くことによって共感を誘う。母はいつでも子供たちの やりたいこと、生き方を応援してくれた。

    そんな母が重い病に侵され、医師に入院をすすめられている。長男 春彦(ジョニー高山サン)の「親(かあちゃん)は死なないものだと思っていた」とボソッと呟く。それ実感 同感!それまでのシーンで笑わせ、共感を誘っているから、悲しさ寂しさの感情の振幅が半端ない。実家はカレー店を営んでおり、家族の味にもなっている。劇中、家族みんなで実食する。そこに家族の原点光景を見るようだ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/05/11 18:42

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