日の出温泉のW杯 公演情報 ZIPANGU Stage「日の出温泉のW杯」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    客席の静けさ
    この劇団のお芝居を観るのは今回で2度目です。前回の内容は主人公に矛盾が多かったけど、笑えるところはあった。今回は、前回よりは矛盾も少ないし、いちおうコメディとしての体裁は整ってるのに、とにかく客席が静かで、私の観た回はほとんど笑い声が起きなかった。シチュ・コメでこんな静かな客席は生まれて初めての経験だ。私の周囲は中高年客がほとんどだったので、気になって観察したが、楽しそうには見えなかった。「芝居が好きで、週何回も劇場に行く」と話していた最前列の婦人客など、眉間に皺を寄せて一度も笑わず、舞台を凝視していた。
    俳優さんたちも「きょうの客はやりにくいなぁ」と思っていたに違いない。でも、笑いたくならないんだもの。俳優は大汗かいて飛んだり跳ねたりしてるんだけど、客席に笑いのうねりが起きないんだなぁ。空回りしてるというか。このレビューも非常に書きにくくて、帰途の電車の中で笑えなかった理由をずっと分析してました。コメディって難しいですね。

    ネタバレBOX

    舞台美術はまずまずだが、この旅館の部屋の入り口に違和感があった。障子ひとつ隔てただけで廊下なの?江戸時代の木賃宿とか、私が小学校時代に泊まった修学旅行生向けの古い旅館はこうだったけど、いまはほとんど見かけないんじゃないかな。いくら秘湯のひなびた温泉宿といっても、こういう時代、宿泊上セキュリティーどうなってるの?ご主人、露天風呂より先にドア付けなさいよって思った。
    で、社員旅行で、社長(佐土原正紀)の泊まる部屋にやってきて、社長が風呂に入るわずかの隙に電話番を頼まれた新人OL(沢本美絵)を「Hしたーい」と追い回す不倫相手の本田(キム木村)がキモいこと。こんな場所での情事にこだわるなんてどうかしてる。それもコンドームを薬みたいにつながりパック状で持ってきて(笑)。この発端の不自然さに加え、キム木村の笑いの決め所のタイミングがことごとくずれて笑いが上滑りしていくので、観ていて不快になってきた。
    旅館の主人(長野耕士)の演技は面白いところもあるが、演出上かと思うが状況の割にやたらヘラヘラ笑っている表情が気になる。OL役の沢本は女子スポーツ選手のように肩に力が入りすぎで、役としての魅力が弱い。
    佐土原は役の年相応に見えて、まじめな芝居のときは良いが、笑いをとるところの間がよくない。本田がアンテナに細工したため、TVが映らないと言って、ほかの部屋の連中が次々、社長の部屋にやってきてTVを観ようとするが「やっぱり大画面で観ないとね」というTVが小さく、説得力がない(笑)。仲居(目次里美)の出入りの都合がよすぎるせいか、彼女が序盤に笑いをとろうとオーバーに話すところでも客はシーンとしていた。
    TV観戦が佳境に入り、日本代表の勝ちに自身の人生の選択を賭けた客たちが試合の経過に一喜一憂し、わめき、嘆き、派手に動くが、その興奮に客席がまったく乗り切れないまま、幕が下りてしまった。コメディとしては最悪である。
    ボケ始めたという老女(滝沢久美)がラスト近くに語る台詞はとてもいい。だから、あえてここでは言葉にするのをやめておきます。滝沢はこの場面は秀逸だが、途中のオチャラケ場面はウケていなかった。
    特にシラケたのは、日の丸を作ろうということになって、「白い大きな布」を一同が探し回る場面。観客は誰でも敷布団のシーツに目がいくので、みんなの動きがとてもわざとらしくて面白くないうえ、本田が白いタオルを得意げに掲げ、みんなが無視してシーツに殺到すると、憤慨してタオルを丸め、叩きつける。この演技がまったく余計で生きてこない。
    キム木村はタイミングをはずすと表情が素に戻り、不満なのか目が三角になるのが気になる。
    まるでアングラ芝居の一場面のように赤いライトでおおげさに登場する元女将の宮本ゆるみ。彼女の役どころは毎度お約束なのかもしれないが、表情がクドすぎてスパイスをまとめて口にほうりこまれたように感じるときがある。こういう大仰な女の役はかつて山田邦子が上手かった。山田はデフォルメしても表情を調節できる技を持っていたからである。
    サポーターの青年(ヲサダコージ)が、熱心なわりにジャパン・ブルーのレプリカ・ユニフォームを着ていないのも気になった。番頭の遠藤(小暮典保)はイマイチ性格がはっきりせず、そのためか、本来は意外性で笑いが起きるはずの、Yシャツを脱いでレプリカ・ユニフォーム姿になった場面が沸かない。
    シチュエーション・コメディの成否は、脚本の完成度もさることながら、客をどこまで乗せていけるかにかかっていると思う。客との呼吸が何より大切だ。そういう意味では、平田オリザの芝居などは爆笑コメディではないのに、客を乗せ、嵌めていくのが実に巧妙である。この劇団の芝居はシチュ・コメなのに、そういった客の熱気との相乗効果が生まれないのが難点だと思った。
    終演直後、出演女優のファンだという後ろの席の女性客が「わーん!よかったよー、うれしかったー」と感極まったかのように泣きじゃくり始めた。この芝居はそういう芝居だったのか。私にはよくわからない。
    余談ですが、劇場でもらった劇団員の座談会の読み物を読んでたら、「彼女と温泉に行った話」とかわりとなまなましいエピソードが載ってて、ちょっと引いた。こういう話って劇団員が居酒屋で飲んでるときにはするかもしれないが、プライベートで元カノとどうした、とか具体的なことを部外者が知ることはあまりないこと(私の観てる劇団では、ない、と言うべきか)と思ってたら、文末に「居酒屋にて」と書いてあった(笑)。温泉やサッカーについての各自の思い出は、せいぜい配役表などのアンケート形式の短いアンサー程度でよいのではなかろうか。せっかく活字化して配るなら、もっと芝居の内容についての座談会にしてほしい。こういうセンスがこの劇団の芝居そのものにも反映されているような印象を受けた。

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    2010/05/21 20:39

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  • どてけん様

    コメント、ありがとうございました。

    >わたしが観たのは22日の夜ですが、客席はどっかんどっかん笑ってたので…
    回によって出来が違ったんでしょうか?

    そうだったんですか。それは幸いでした。出来と言われると微妙なところですが・・・(笑)。

    >ちょっとあざとい部分もありましたが十分楽しめました。
    あざとさでいったらこの前みたクロカミショウネンのほうが上かな〜
    私は、ベタベタなの大好きなので、どちらも多いに笑いましたが。

    好みもあるのかもしれませんが、あくまで個人的な感想でいうと、あざとさといってもクロカミとは脚本の方向性や質の違いを感じます。

    >あと、自分的にはコメディーはお客さんが少ないとなんだか楽しめない気がしてるのですが、きゃるさんの観た回はお客さんが少なかったりしたんでしょうかね?

    たしかに観た回はお客さんは少なかったですね。舞台は生ものだということもあり、人数やそのときのお客さんにもよると思います。でも客の人数の多寡よりも、笑いのタイミングをはずしっぱなしということが大きかったと思います。俳優が素に戻って焦ってしまうと、万事休すです。クスクス笑いする人はあっても、笑いのうねりは起きていなかったし、客席は終始引き気味でしたね。だからつい、お客さんの表情を観察してしまったわけです。最前列の険しい表情の婦人客は開演を待つ間、私の隣でしていた会話の内容からも、観劇歴が長く、かなり目の肥えた客だと感じました。私もかなりのコメディ好きで、つまらないギャグにも反応するタイプでベタな笑いも嫌いではありませんが、今回は全然笑いたい気分になりませんでした。コメディとしては文字上は笑えるはずの場面もあるにはありましたが、自分の感じ方では、これまで観てきたなかでも上質なコメディとは言いがたかったですねぇ。ごめんなさい。だから、もし、私が満席の会場で観たとしても、俳優の演技や演出が同じだったなら、感じ方はあまり変わらなかったと思うのです。
    サッカー観戦の場面は一考の余地あり、ですね、客が置いていかれてましたし。
    前回の公演は、少しはまだ笑えたんですけどね。
    もちろん好みもあって、この作品が大好き、とても評価できるというかたもたくさんいらっしゃるでしょうから、ここに書いたのは、あくまで私の感想にすぎませんが。
    前回も今回もフライヤーの文章から期待して観にいったのですが、求める笑いの方向性が自分とは違うのかもしれません。

    2010/05/24 21:52

    きゃるさんの感想を読んでちょっと???でした。

    わたしが観たのは22日の夜ですが、客席はどっかんどっかん笑ってたので…
    回によって出来が違ったんでしょうか?

    ちょっとあざとい部分もありましたが十分楽しめました。
    あざとさでいったらこの前みたクロカミショウネンのほうが上かな〜
    私は、ベタベタなの大好きなので、どちらも多いに笑いましたが。

    あと、自分的にはコメディーはお客さんが少ないとなんだか楽しめない気がしてるのですが、きゃるさんの観た回はお客さんが少なかったりしたんでしょうかね?
    どちらにしても残念。

    劇団さんも毎回同じレベルでお客さんに届けられると良いですね。

    2010/05/24 15:18

    KAEさま

    >元々、知らない劇団でしたが、今後、近寄るのはやめておこうと思います。(笑)

    コメントありがとうございました。
    何か責任感じてしまいますが・・・(笑)。
    私はあとから読んだ雨模様さんのご意見にも賛同しました(笑)。
    そう、客が置いていかれちゃって、俳優だけがドッスンバッタンやってるんです。
    高評価のかたもいらっしゃるので、回によってはウケタ回もあったんでしょうか。
    私の観た回は大人の客が多かったですが、出演者の知り合い以外はシラーッとしてましたね。
    何より許せなかったのは、笑いをとれなくてイラ立った俳優が素を見せてしまったことでしょうか。
    で、間が合わなくて、手が泳いでる俳優もいました。この劇団にコメディが向いてるのかどうか、まで考えてしまいました。マジメに。毎回、フライヤーに「抱腹絶倒」と書いてるようですが・・・。
    狙いどころは痛いほど伝わってくるだけに、こちらとしてはずっと「はずした場面」を見続けるわけです。これってかなりの苦痛でした。
    観てきた感想を夫に話したところ、実はKAEさまとまったく同じことを言われてしまいました(笑)。

    2010/05/22 18:53

    きゃる様
    私、そういう劇団、苦手です。一事が万事!
    元々、知らない劇団でしたが、今後、近寄るのはやめておこうと思います。(笑)

    2010/05/22 00:05

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