Do!太宰 公演情報 ブルドッキングヘッドロック「Do!太宰」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    古くて新しい物語、大きな演劇
    演劇ならではの時空間の仕組みを利用した“手法”で、あたらしさや面白さを提供することが、演劇界のひとつのトレンドになっていたような気がする昨今。

    でも、今回のこの作品はしっかりとした物語の中で、オリジナリティも現代性も、そして、演劇ならではのダイナミズムも実現していたと思います。

    こういった「物語」の中でさまざまな試みに挑戦することの潔さには今ドキなかなか出会えなかったという気もします。2時間20分(休憩なし)の長尺もさほど気になりませんでした。



    ネタバレBOX

    太宰(と思われる男)の葬式に漫画家が友人として参加していたりと、現在の日常を生きる人々と太宰作品の世界を自然につないでいく手つきは、観客を気持ちよく作品の流れにのせてくれます。

    太宰らしき男とその作品の登場人物たち、読者、書き手である喜安さんの作品の登場人物、そして現代を生きる漫画家と周辺の人々……が、入り乱れる構造は、ポップに軽やかに、「太宰治の作家像」を超え、やがて「創作することの意味」にたどりつきます。


    独特のナイーヴさとそれを自ら相対化しウジウジする小心ぶり、そんな自分が大好きなナルシシズム……太宰治という人のさまざまな側面(それは一つでもあるけれど)は、多かれ少なかれ、誰もが持っているもの。だからこそ読者たちは「私のことを書いている」と口々に言うのでしょう。

    作中では作品=排泄物といった表現が登場しますが、その発言にこそ私は作り手の大いなる自信を感じもしました。

    ラスト、どこまでメッセージをハッキリ出すのか――ということに関してはきっと、好みの分かれるところかもしれませんが(あまり言わないのも、かえってあざといとは思いますし)……いずれにせよ、「今、ココで演劇をする/観る」ことの意味をしっかり示した作品だったと思います。

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    2010/05/21 11:24

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