実演鑑賞
満足度★★★★★
#相島一之 #sara
#高野ゆらこ #児玉磨利
#鈴鹿通儀 #田中祐希
(敬称略)
ハートフルなランドではなかった。それでもそこは生きづらさを抱えた人の楽園かもしれない。現実と虚構、人生と映画、実世界の中に侵食したバーチャルワールド。交錯するのは人生なのか人間同士か。
どんな作品にも、わからないモノは存在する。それは当たり前で、我々は文学も映画も舞台も、芸術は観聴きする者が観聴きできないモノを補完しながら鑑賞、観賞する。それが作り手の独りよがりでは困るけれど、登場人物や作家の向こう側に思いを馳せるような難解さは心地良い疲労をもたらす。今作はまさにそんな疲労感を味わうことのできる作品だった。
歴史に名を残すことのない凡人は、如何にしてこの世に存在したことを何かに刻むことができるのかを漠然と求めているのだと思う。それが、ナイフで幹に名を彫ってみたりすることになるのではないだろうか。その延長線上に、読み人を必要としない遺言があるのかもしれない。
教育現場に身を置く者としては、いじめの持つ大罪について改めて考えなくてはいけない気がした。どんな世界でも、弱者を感じることで自己存在感を得ようとするのが人間の習性だと思うから。
キャストも素晴らしかった。大好きな相島一之さんはもちろんのこと、文学座の超新星saraさんのスタイルと歌と演技…というか佇まいに痺れたし、児玉磨利さんも素晴らしかった。
開演と終演に施される映画上映スタイルの試みに拍手。作品の特色とリンクしての演出だけれど、そうでなくても演劇にエンドロールがあってもイイと思った。演劇でも、スタッフにも光が当てられてイイ。
2023年の重要な作品になると思う。必見。