白夜 公演情報 劇団演奏舞台「白夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。ー劇団創立50周年記念公演Ⅱ・寺山修司没後40年記念認定事業ー
    久し振りの劇団演奏舞台…変わらずアトリエでの公演だが、満席いや増席するほどの人気に驚いた。以前 観た公演は、板敷座布団が中心だったが、本作は全て椅子である。音響エリアだけは変わらず下手に設えてある。

    濃密な会話の一幕劇…寺山修司 26歳の戯曲、初演は1962年というから約60年前の作品。テーマは「恐怖」ということらしいが、同時に、台詞にある「希望という名の重い病気」、そして希望を追い求め<続け>ることが どれほど残酷であるか。

    釧路の北海岸にある安宿の一室が舞台。男は失踪した女を探す旅を続けており、宿の女主人、老人、女中に女の行方を尋ねる。溢れる男の想い、そして衝撃の事実が…。
    演出は、作り上げた舞台美術(室内)、情況の変化と時間の経過を表す照明の諧調、心情表現を効果的に表す音響 音楽が実に印象的だ。演技も静かな中に 力 のこもった熱演で観応え十分。
    抒情的な印象が強く残るが、大いに満足した公演だ。
    (上演時間1時間20分) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央奥に部屋ドア、手前にテーブルと椅子、上手にベットと窓。他に黒電話や裸婦の絵画、天井には傘電灯がある。全体的に薄暗く、陰鬱な雰囲気が漂い 心(うら)ぶれた宿屋の一室を表している。上演前から静かな波の音が聞こえる。
    なお、当日パンフに 寺山修司は「O.ヘンリーの短篇『家具つきの貸間』から発想を得た」とある。

    梗概…一人の男が宿屋の女主人に案内されて部屋に入ってくる。男の名は猛夫、くたびれた様子で椅子に腰かける。テーブルの埃を見て、あまり利用されていない部屋では と訝しがる。男は弓子という女を探しており、投宿したことがないか尋ねる。まもなく女中が来て部屋の掃除をし始める。そして同じように女のことを尋ねる。掃除の途中で先客の忘れ物が散らばり、その中に見覚えのある品を見つけるが…。そして老人が入ってきて、自分の(恋愛)体験談を話し出す。

    老人は戦時中に憧れていた女性がいたこと、そして人生長いようで短く、時の流れは残酷でもある。猛夫が弓子を捜し始めて5年が経ち、空しい時を過ごしている。老人は言う…いつか見つかるかも知れないという希望に憑りつかれてしまった と。時間を無駄にしてはいけないとの忠告をするが、猛夫は聞き入れない。一方、猛夫は言う。実は自分が先に散歩といって家を出たまま1カ月帰らなかった。その間に彼女が居なくなった。実は、彼女も猛夫を捜して旅している、その二人の行き違いの旅路でもある。猛夫の疲れ果てた姿が彼女に重なり、それが客商売に影響して…。ここで、冒頭のあまり使用されていない理由、女主人のガスコンロ云々といった台詞の意味が解ってくる。

    いつしか日が暮れ 窓から月(星)明かりが差し込み、電気を付ける。が 停電によって暗闇へ。老人が蝋燭に火を灯し幻想的な光景が浮かび上がる。そこに捜し求めている女の幻影を重ね合わせているかのよう。音響・生演奏 音楽は海辺の近くということもあり、波の音、毎夜決まった時間に歌う 女中の子守唄、そして心情表現としての歌など、照明・音響等の舞台技術<効果>が素晴らしい。

    演技は、猛夫(森田隆義サン)の疲れているが 希望を捨てない気丈さ、老人(鈴木浩二サン)の訥々とした話し方に滋味が溢れ、女主人(原律多サン)の素っ気ない素振りと訳あり態度が意味深で、女中(池田純美サン)の少しコミカルで愛嬌ある振る舞い、一人一人の情況がしっかり表現できている。その演技には、舞台で大切な観せ 感じさせるといった 力と 艶があった。演出・音楽・美術は浅井星太郎さん、その演出…基本は、猛夫と他の人物の対話であり、そこで交わされる台詞一言一言に深い意味が込められている。舞台全体に漂う抒情的な雰囲気が衝撃のラストシーンに余韻を残す。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/04/15 16:08

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