実演鑑賞
満足度★★★★★
コンピューターの実用化に大いに貢献したイギリスの数学者チューリングの伝記で、すでに映画にも何度かなっていて第二次大戦下ナチの暗号破りから始まる話も、ゲイが犯罪だった時代の話も面白い。三十年以上前に西武劇場で四季が上演したと言うが、演出も演技も全く違うものだったろう。今回は今の時代にふさわしい見所のある現代劇になっている。
まず、主演の亀田佳明。ゲイの天才の特異なキャラクターを演じきった。イギリスの演劇界はゲイだらけだから脚本も周到に書いてあるに違いないが、そこを汲めるだけ汲んでお見事。日本の舞台ではじめてリアルなゲイを見た。(形を真似ていると言うことではない。演じきっているということだ。最後のギリシャまで行ってゲイの若者を買うところのリアルな安堵感などたいした表現力だ)。脇役陣も健闘。
二つ目。演出の稲葉賀恵。終始緊迫感が途切れない。ワンセットをうまく使い回して全く違う場面をさして説明もなくつなげていく。それがすべてよくわかる。俳優の出入りを八方から登場するように作ってあって、テンポが良い。陰湿になりやすい実話ベースの話だが、ドライなタッチで、国家と個人、ゲイの差別、家族、などのテーマを浮き立たせる。とにかくうまい。
三つ目。スタッフの息が良く合っている。こう言う演出だと、美術、照明はじめ舞台を支える裏方のスタッフの息が合わないと悲惨な出来になる。2時間50分(休憩15分)
残念と言えば、さすがに本が50年前で古く、今なら、もっと一言で素人に解るコンピューターの仕組みなど台詞に出来たろうに、(例えば、チャーチルの擁護の中にしのばせるとか)数学とコンピューターの推論の説明のところがわかりにくい。良い芝居なのに8割強の入り。空席があった。