実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/03/22 (水) 14:00
劇団創立50周年の記念公演。千秋楽の舞台を見た。
銅鑼らしい、どこまでも前向きな物語に勇気づけられる。「演劇を見たから明日は少し、今日より元気かな」と感じるような、すてきな群像劇だった。
どこの街でもある、銭湯の廃業話。NPOが間に入って地元の市民がこの場所で起業することで再生を図るという筋書きだ。ところが、企業セミナーに応募した市民はどちらかというと失業したからここで、という人たちばかりで、果たして結果を出せるのか暗雲が漂う。
登場人物が22人という異例の多さだが、誰がどの人か分からなくなることはない。それは、登場人物一人ひとりの物語を丁寧に描いているからだ。普通の市民であるが、それまでの人生に挫折とか、転回とかがあって印象的な人たちだからだ。脚本の勝利だと思う。
企業セミナーの講師として登場するソーシャルワーカーがよかった。その人の表に出ていない力、強さを引き出し前向きに進む支援をする。ストレングスモデルといわれるソーシャルワークの実践を舞台で見るとは思わなかった。事実、ここで自分の持っている潜在能力などに気付いて新たな一歩を踏み出した市民がいる。まさに、立派なアウトカムを引き出している。
さまざまな難題と向き合い、自分を見つめながら進んでいく市民たちを見て「自分も」と感じる。演劇の力を存分に発揮した舞台に拍手を送りたい。