実演鑑賞
満足度★★★★★
劇団銅鑼の一人一人を尊重する庶民的人生肯定リアリズムが見事に発揮された舞台だった。登場人物は22人。劇場受付でもらった人物関係図を見て、こんなに人物が多くて話が深まるのだろうかと危惧した。しかし全くの杞憂だった。運営でも民主主義を貫く劇団らしく、登場人物それぞれに物語があり、願いがあることが丁寧に描かれる。突出したスターはいないけれど、その分若手から超ベテランまでがのびのびとアンサンブルをつくる。出色の群像劇だった。最後は涙腺が緩んでしまった。銅鑼所属の劇作家の新作だそうだ。自分たちの持ち味をよく知る作家だからこそ書けたものだとおもう。
廃業した銭湯を使った起業講座に集まった7人は、元水商売、元タクシー運転手、あるいは講師の女性に会いたいだけとか、皆頼りない人たちばかり。志望者というより失業者の寄せ集めだ。しかし視野と懐の広い桐谷会長(谷田川さほ)のリードで、そういう彼らの可能性にかけていく。受講者と運営側のそれぞれの弱点と「願い」のぶつかり合いが化学変化を起こし、最後は思いもかけない「アウトカム(成果、波及効果)」をもたらす。
いわば大人の「がんばれ、ベアーズ」である。
見ながら「弱さの中に強さがある」ことを気づかせてくれた。「自分を弱いダメな奴と考えるのはやめて、自分は自分と生きていこう」というセリフに励まされる。