パンラが野毛にやって来た★GA~!GA~!GA~! 公演情報 studio salt「パンラが野毛にやって来た★GA~!GA~!GA~!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    雰囲気を切り取る力
    以前の作品に比べて物語性のようなものは薄く、
    むしろ動物園の雰囲気を切り取る力に
    その卓越を感じる作品でした。

    ネタバレBOX

    ソルト的コメディということでしたが、
    コメディの枠組みでこの舞台を捉えると
    メリハリに足りなさを感じました。

    しかし、動物園という世界を正門ではなく
    勝手口から眺めて描写していく力は
    とても確かなものに思えました。

    多分モデルになったであろう
    桜木町からぷらぷらと坂を上ったところにあるその動物園へは、
    私も何度か行ったことがあって
    それが無料であることに驚き、園内の意外(褒め言葉)な充実に
    さらに驚いたことがあるのですが、
    この舞台を観ていると、そのことがすっと思い出される。
    しかも檻の外側からではなく
    格子の内側の感覚を伴って
    その雰囲気やささえる人たちの空気が
    とても緻密に伝わってくる。
    浮世絵などでも、
    波の間や作りかけの桶の内側に富士山が描かれることで
    富士山の印象が一気に広がることってあるじゃないですか。
    それと同じように
    動物園の風景をちょっと違う角度から描くことで、
    山の上の動物園での感覚に
    すっと奥行きが生まれる。

    多少ベタとさえ思える
    絵空事の物語で時間を流していく中で
    動物園というある意味特殊な世界のリアリティを現出させていく
    作・演出や役者たちのスケッチ力に
    すっと捉えられる感じ。

    ひよこのエピソードからやってくる現実の質感、
    飼育員たちの動物に対する想いと
    プロとしての割り切り方・・・。
    そこにある動物への愛情が、
    動物園の存続という政治的な風合いや、
    さらにはダンスの進化と撚り合わさっていくのを観ていると、
    単なるコメディとは別の、
    動物園という世界の思えてくる。

    そして、物語の枠組みが淡白だからこそ
    バイアスの掛かっていない
    動物園での命の軽重の概念が
    ゆっくりとやってきて、心に残るのです。

    いろんなバリエーションでの表現ができる
    この劇団の底力を感じたことでした。

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    2010/05/02 08:55

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