三月大歌舞伎 公演情報 松竹「三月大歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    午前の部「花の御所始末」を拝見。一幕ではまず足利義嗣(坂東亀蔵)の母の愛を得られない悲しみを語る場面が切ない。場面変わっての、母・兼子(高麗蔵)の、反抗的な息子を愛せない罪悪感の告白と対を成して、この母子関係に、親子の難しさを感じた。

    二幕からは、父・義満と兄・義嗣を次次殺していく足利義教(松本幸四郎)の悪人ぶりがはじける。セリフ回しがうまい。休憩を挟んでの第三幕では、臣下の畠山満家(中村芝翫)が義教の黒幕的存在から、一気に失脚し、身も世もなく将軍に縋り付く姿が哀れ。義教が「良心とは何か。(略)それは弱い心だ。そんなものは持っていない」と、満家を無残に切り殺す。非情ぶりが極まれる。

    歌舞伎は見ても、なかなかよさがわからないことが多い(現代劇と違い)。この芝居は昭和に書かれた新作で、セリフもわかりやすいし(もちろん歌舞伎調だが)、登場人物の心理も(義嗣・兼子の母子のように)現代に近い。野望の実現から転落まで、端的なセリフにしぼり、正味2時間でスピーディーに見せる。大変楽しめた。

    ネタバレBOX

    「リチャード三世」の翻案なのだが、片腕ともいうべきバッキンガム公にあたるのが満家。これを、義教の実の父(つまり義教は不義の子)としたところが凝っている。50年近く前の初演の時、義教と満家を松本幸四郎(現白鸚)と初代白鸚の父子が演じたところから発想したのだろう。

    最後に、行秀(片岡愛之助)が土一揆の指導者として復讐に現れ、義教を死に追い込む。「(義教のせいで)片目を失い、かえって人間としての両目が開いた!」「この一瞬のためにオレの一生をかけたのだ」という啖呵が見事。松本幸四郎が最後に見せる立ち腹切りなど初めて見た。愛之助も刀を動かせない迫力で最後の幕切れもよかった。

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    2023/03/14 20:24

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