実演鑑賞
満足度★★★★
「ノー・ライツ」(旧演出では「光のない。」)を見逃したので今回は、と足を運んだ(同じイェリネク作品)。モノローグ台詞がずーっと続くイェリネクの御多分に漏れない作風だが、今作の注目は「コロナ以後」の作である点だ。連綿とリレーのように続く、継がれる言葉は様々な感情や状況やニュアンスを脳内に生起させるが、暫くの間、イメージは一つところに集約せず、俳優の身体は大きな舞台装置(台)の上で、あるいは台を下りた周囲で、ねり歩いたり一斉に同じ動きをやったりと忙しい。(※装置は広い円形の台で、人が乗るとその重さで傾き、その動きに連動して台の辺縁に付いた裸電球が点滅したり光量が増減、また音が鳴る・・等オートマティックに反応する。)
断続的にやっている動きがある。それは終盤に至り、皆が台上に乗って頻回になるのだが、その動作の合間に一人が台詞を言う。この台詞が、コロナ禍に生きる人間の葛藤を突き抜けた意志の表明、不服従宣言に聞こえてくる。自動機械のような「動き」はコロナに関連するワードをきっかけに為され、私にはメディアを通じて思考停止・自動機械的反応へ人々を誘導してきた「信号」の比喩に感じられ、おちょくったような動きは痛快であり、憤りに近い民の声にもシンクロするものに思われた。
中盤掴みづらい時間があり、寝落ちしてしまったが、終盤の畳みかけは気持ちよく、安部聡子の発語のニュアンス伝達力に改めて感じ入った。