実演鑑賞
満足度★★★★★
劇団初めて三十年、先に「しびれ雲」いまこの「D!ont freak out」。同じ昭和戦前期ものをそれぞれ好きな先行作品の本歌取りをしながら、自分の長い付き合いの俳優たちと作るのは作者冥利に尽きることだろう。Conglaturation!!
松永玲子 村岡希美の二人に捧げたような作品だが、二人から引き出すものは引き出し、しびれ雲とは真反対のホラーである。それでいながら、ともに芝居見物の楽しさを十分味合わせてくれる。スズナリでは見たことがないようなマッピングや照明、道具操作の技術を尽くして、昭和期なら松沢病院、といった感じの脳病院院長一家の不気味な安逸を、松永・村岡の奇妙にメイクした女中二人の目で追っていく(二人、快演)。つじつまが合っているような、合っていないようなストーリー展開もステージ技術で見せられてしまう。
「女中たち」のようでもあるし、狂人幽閉の話もどこかで見た(イプセンの幽霊?)ような気がするが思い出せない。客席一杯に客を入れているが二百までは行かないだろう。このキャスト・スタッフで普通にやれば赤字である。チケットも8千円を割る。こういうスズナリという劇場に配慮できるところもKERAの偉いところである。補助席も出ていて手に入りそうだから、一見をおすすめする快作である。意外に短くて2時間20分。