実演鑑賞
満足度★★
鵺的の芝居は思い込みの激しい程面白くできあがるのだが、この作品は、業界内輪話としては、中村ノブアキのように陽性ではなく、陰気な告発調で、中身も今までにも言われていたことで今更舞台で見ても気が滅入るばかりだ。
すっかり創造力を失ったヒットメーカーが、周囲の才能をパワハラ・セクハラで食い尽くして生き延びる、という話はテレビ・シナリオ業界ばかりで無く、商業芸術(とまでは行かない広告なども含め)の世界にはよくある話で、おおっぴらに語られなくなった今でも、その産業システムの中に内在しているのだから、どこにでもある。他の業界にもあるだろう。
そこでなにか新しい生き方を生きる人物でも描き切れていれば、面白くなるのだが、(現実に泳ぎ切った人はこれまたいくらでもいる)ここは、昭和のパターンを一歩も出ていない。エピソードも主演女優が勝手なことを言うとか、ロケハンと称してセクハラとか、一家のホームドラマとか、昔の週刊誌、噂の真相並では迫力に欠ける。
似たことは今でもあるだろうが、才能が埋もれる確率は非常に低い。今は周囲が放っておかないし、周囲も商売なのだからそれなりに真剣なのだ。
主演の佐藤弘幸をはじめ女優陣も一本調子なのもうまくない。なんとかつじつまを合わせるのはうまい寺十吾を今回は手がつきた。これで「デラシネ」と言われても気取り損ねたという感じだ。