クローバー【終了】 公演情報 東京アシンメトリー舘【閉舘】「クローバー【終了】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    真ん中にLOVEがあんだよ。
    ワイルド、フレンドリー、正義感の3拍子が揃ったキャラクターに、あまり他人に深入りせずに一歩引いた目線を保持しながら時折軽いジョークを飛ばし合う光景。
    衣装、セリフの言い回し、ジェスチャーなどの外的要因含めてとにかくアメリカンであることにこだわっており、どこかで見たことのあるアメリカが、ぼくたちわたしたちの思い描くアメリカ像がギュッと凝縮されたような舞台。
    会場の解放感もアメリカ的。75分。

    ネタバレBOX

    リップサービスなんだか本気でズレてんのか定かではない、LOVEが不用意にナナメってるひとたちが入り浸るレンタルボックス店、CLOVERを舞台にした群像劇。
    大きなハプニングや時間軸のトリックなどは特になく、あくまで会話と振る舞いによってエピソードを小出しにしていくストレートプレイ。
    物語はここに来ればすっげースクープがゲットできるのではないかと思い、CLOVERを取材しに来た大手出版社の崖っぷち契約社員、大橋ツバサの視点を通して描かれる。

    このCLOVER、昼はレンタルボックス、夜は闇のレンタルボックスとして運営されている!って巷ではまことしやかにささやかれていて、その秘密を探るため、親友のリョーコに掛け合ってもらい、ツバサは取材にこぎつけた。リョーコはCLOVERの店長・シューの恋人で、シューはこの取材に乗り気ではなかったらしいが、リョーコの親友だからと渋々了解したという。・・・にしてはこの店長、店内を撮影しようとするツバサに対し、もっとオレを撮ってくれ、とせがむ無駄にワイルドなオラオラ系。笑

    話は前半、このトゥービーワイルドなシューのナルシストぶりに辟易しながら傍観することになる。バーカウンターが手前に設置されている細長い奥行きのあるギャラリーをそのまま使用しており、CLOVERのバイト店員・のぞみは、そのカウンターのなかで平山夢明の本を読んでいたりもするが、基本的に放置プレイで、本筋に関わってくることはほとんどなく、彼女についての情報はおおよそにして、ハンニバルのレクターのモデルになったジェフリー・ダーマーに美学を感じるとか本気で言ってる害はないけど、無邪気に何かがズレてる人ってことくらいしか出てこない。都市伝説好きののぞみから、闇のレンタルボックスについての情報を聞き出したりすると、色々出てくるようにおもったのだけど、ツバサはシューを取材することに一生懸命になってるためか、話はさほど膨らまない。

    誰かに口止めされているのだろうか。誰もこのことについて口を閉ざす。
    闇のレンタルボックスの謎を知ってるのは、どうやらオーナーの彼女のアケミさんだけらしい。真実を炙りだすことを職務とする記者らしくアケミさんに問い詰めると、アケミさんは深く関わりあうと命を落とすと警告を鳴らした。

    そんな折、強烈な個性を持ったふたりがツバサを惑わせる。ひとりは趣味で創作した作品をレンタルボックスで売っている大手家電メーカー社員のメガネ。もうひとりはちょっとした訳ありでワンボックスのなかに住む、電波少年的箱男の中国人、チェン。異なる理由でレンタルボックスを利用している彼らの振る舞いとツバサとの関係性が中盤以降、物語の中核となる。(ここでもちょっとズレてるキャラクターは健在で私の位置からは、CLOVERのオーナーの彼女、アケミさんが営業トークした後にチューして渡してくれたお名刺のキスマークに頬づりしちゃったりアケミさんの携帯番号を暗記するために、何度も繰り返し呪文のように唱えちゃったりする変態ちっくなメガネくんがとてもよく見えた。)

    メガネくんは創作した頭がもげた大仏(!)をお世辞で褒めてくれたツバサに一目惚れして恋心が暴走。魂込めてつくった自分の作品を褒めてくれたことは、自分のすべてを認めてくれたってことなんだ!なんて自意識過剰に確信しちゃって今すぐツバサにプロポーズしようとする彼を、シューやリョーコは止めさせようと躍起になる。

    後半、今日が〆日だ。との連絡が本社から入り、肝心の裏レンタルボックスについてスクープがまだ取れないことに追いつめられたツバサはついに、現実から逃走し、夢の世界でチェンと出会う。彼は夢の世界の住人で、とても自由に粘土で創作をしていた。そこで誰にも言わないでいた本当の気持ちをひとりごとのように呟きはじめるツバサ。それは付き合っていた恋人と将来を考えたときのこと。仕事なんかしないで彼のために生きることを選ぶことは”幸福な挫折感”なんじゃないかな。って考えたこともあるってこと…。膝を抱えてうな垂れるつばさにチェンは「わかるよ。」なんて笑っていう。チェンは言葉を理解できないから。そう安心していたツバサは衝撃を受けるが、チェンこそが私を本当に理解してくれるひとなのだと悟る。(背後にずっと流れてるエレクトリカルパレードが、胡散臭さとシニカルさを助長させていて効果的。)

    程なくして現実世界に戻ってきたツバサにアケミさんは、書きたくもない記事なんか書かなくていいし、これ以上CLOVERを詮索して危険な目にあうようりも、安定した収入のあるメガネと結婚したら、どう?なんて一般論で迫めてくる。そして判断がつかぬうちにオレと一発ヤッタらいいスクープを与えてやる、なんて言いよってきたシューに魔が差してしまう・・・。結局。あんたバカね、なんてアケミさんに罵られながらもツバサはチェンを選び、一人前の記者になる夢を追いかけていくことを決心する。

    誰に何を言われようと、最後は自分自身でしか決めることはできない。
    迷いのない選択ができた時、ひとは4つ葉のクローバーを探し当てた時のような喜びに出会い、そこから本当の人生がはじまるものかもしれない。

    ポップな台詞の掛け合いとアメリカンな世界観。を基調とするコンセプトから、何となく面白いことを言い合っているオフビート感を想像していたのだが思いのほか、自分は何者になりたいのか。今後、どんな人生を送りたいか。という誰もが一度くらいは考える普遍的な気持ちをテーマにしており、好感を持った。また場面転換や、心情を表わす表現として要所要所で用いられるダンスがブロードウェーミュージカルみたいで(←映像でしか観たことないけど)、ただ歩く。という行為ひとつにしてもキャラクターの特性が生かされている演出にセンスを感じたが、”観て触れる新感覚の芝居”と言える程のイメージは喚起されず。
    特に触れることに関しては、レンタルボックスに置いてある品物に上演外の時間に手にとっみれることだけではなく、CLOVERを紹介する際の「どんなモノにも歴史がある。」という台詞になぞらえて解説するなり、CLOVERで働く者がリスペクトしていることなどを媒介にしてCLOVERがこころの深奥に触れ合える場所に成り得ることを、あるいはクローバーの名にあやかって、ハッピーになれるかもしれない場所であることを、もっと踏み込んで描く必要があったようにおもう。その役割を担うのは恐らく、店長のシューであったはずなのだが、ちょっと面白い自己中キャラというだけで、客に対して無関心で、主張はあるものの、信念が貫かれていなかったのは勿体ない気がした。CLOVERの真ん中にLOVEがあるのなら、あなたのなかにもLOVEはあって欲しかった。

    あと、私の観た回がたまたまそうだったのかよくわからないが、客入れ時に出演者同士であったり、関係者の知り合いらしき観客とがお喋りをしており、そのあまりにも内輪的なノリにまったく馴染めず、受付を済ませた後、開演前まで近所で時間を潰してから行った。お喋りをするのは大いに結構だが、アメリカンな人たちならば、観に来た全員に楽しんでもらえる雰囲気作りをまず第一に考えるのではないだろうか。作品内容にさほど悪い印象を抱かなかったため、この点については少し残念だった。

    もう一点補足すると、役者たちがえ?もうはじまるの?みたいな演劇的でない素の状態で舞台となる場所にしばらくいた後に、これから始めます。って前置きがあってから本編に入ったけど、それは狙ってやったことなのかどうかと疑問だった。前置きなんかしないで音楽がバーンて掛かった瞬間にキリっと表情が切り替るとメリハリがついて恰好いいんじゃないかな。

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    2010/04/23 01:33

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