実演鑑賞
満足度★★★
全体的には、或る有名な映画を連想させつつ、乱歩小説の世界観へ誘う、そんなイメージの物語であった。面白いのは、現在と過去(10年前)を交錯し、ミステリアスで時にサスペンスのような場面を取り入れ関心を惹くところ。不思議な出来事とドキッとさせる感覚、それを簡易な舞台美術で観せようとする工夫。今の暮らしに立ち止まり 昔の(不思議な)出来事を回想する、そんな単なるノスタルジックドラマとして描いていないところが魅力的だ。この公演の主人公は主宰の木村美月さんの姿に重なり、その思いが強いといった印象。因みに主人公は別のキャストが演じており、もしかしたら客観的に眺めたいといった思いがあったのかもしれない。
登場人物は5人。語り手となるのは、ひょんなことで知り合った主人公・権正さとみ(椎名慧都サン)と同じ大学に通う男子大学生・宮知一郎(宮地洸成サン)。主人公は不自由なく育った普通の女子大生で、現実は普遍的な設定だが、乱歩小説に登場する建物や出来事を絡めることで奇妙な世界、その虚実をテンポよく描いていく。
(上演時間1時間30分 途中休憩なし)