点と線のオブリビオン 公演情報 9-States「点と線のオブリビオン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人の輪と温かさを綴ったヒューマンドラマ。同時に現在と過去を交差させ物語としての興味を惹く上手さ。作り込んだ舞台美術が物語<世界>を具体的に観せる。よく聞く言葉…過去は変えられないが、未来は作(変え)ることが出来る。過去の出来事を描かなければあり触れた光景、逆にあり触れた日常(足元)にこそ幸せがある、そんなことを改めて知る。

    タイトル「点と線のオブリビオン」は、点<人>を結ぶ(関わる)と線<絆>が生まれ 新たな世界を築き始めた現在。一方で忘却や無意識といった人の<潜在>や<歴史>を描き出した過去。それを巧く絡め、人に歴史ありーその謎を垣間見せることによって物語を牽引していく。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    柴村酒造が舞台。その舞台美術は中央にカウンター、上手に玄関や二人席のテーブル、下手に座敷<座卓や座布団、明障子>や奥へ通じる暖簾 通路がある。

    物語は、この酒造の看板娘で記憶喪失の柴村凛(石井玲歌サン)が主人公。冒頭の怪しい雰囲気、そこで謎めいた過去を垣間見せ、暗転後、一瞬にして現在の暮らしへ。柴村酒造は、代々 辛口酒を造ってきており、今の杜氏もそれを守っている。一人息子の結城はもっと柔軟に酒造をしたいと5年前に家を出たまま。凛は海辺で倒れていたところを助けられ、記憶がないことから<凛>と名付けられ養女になっていた。前半、結城と凛に接点はないが、二人の酒造は似ているような。頑固一徹の父であり杜氏、その親子関係を中心にした周りの家族・人間関係を面白可笑しく描く。

    勿論、地元愛らしき近所の居酒屋、グルメ記者による紹介記事など人と切っても切れない土着性が透けて見える。凛の記憶がないことは、新たな家族と今から始まる人生であり、同時に ここが生まれ育った土地でもあるような。

    物語は、凛が過去に犯した犯行を暴き 罪を償うことを求める人物が現れ 不穏に動き出す。断続的に過去をフラッシュバックさせ、何時しか自分の過去を思い出す。刷り込まれた犯行のようでもあり、詰め寄る人物と対峙する。そして自ら…。

    舞台美術として、舞台と客席の間の上手 下手にモニターが設えてある。冒頭や場面転換時に字幕を映し、情況等を説明している。例えば「我思う故に我あり」などは、現在の心情描写であり、これからの生き様を語るようだ。人生の表裏ーそれを凛の闇過去に負わせることで、生きてきた<証>を描く。同時に社会の裏表ー援助・支援という名の詐欺まがいの犯罪、個人情報の流失(操作)等、一様ではない個人と社会の状況を巧みに描く。ラストは 胸を撫で下ろすような…ヨカッタ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/02/25 19:08

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