コウセイ 公演情報 ラビット番長「コウセイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    昭和24年(1949年)2月、岡山県で発覚した『岡田更生館事件』を舞台化。この事件の面白さは江戸川乱歩的で何故当時映画化されなかったのか不思議。これをやるだけでも興味が湧くが、更に将棋界のスーパースター・升田幸三を絡めるアイディアに痺れた。複雑だが逆に解り易い構成、パッパッパッパッと次々にシーンが展開する演出は唸らせる。松本清張のサスペンスっぽい戦後まもなくのおどろおどろしさ。

    独りヒールとして立ちはだかる野崎保氏がMVP。“城西の虎”添野義二や三島由紀夫を思わせる武道家顔。「こんな奴がいる施設に収容されたら地獄だろうな」とつくづく思わせてくれる。
    更生館からの決死の脱走に成功した宇田川佳寿記氏はチャンス大城を思わせる愛嬌。やたらご飯への強い執着、「食べます!」が笑わせる。
    井保三兎氏演ずる人間愛に溢れた将棋指しはいつもながら優しい。「こんなふうに生きていけたなら」と誰もが胸の何処かで憧れる。
    奥さん役の江崎香澄さんのあったかさ、生活感のリアリティー。
    隣家の娘役の鈴木彩愛さんの可愛らしさ。
    能勢綺梨花さんはエロエロ、観客はメロメロ。
    地元の老婆役や仲間を売って自分だけ助かろうと考える密告者役など物語の要を担う松沢英明氏は裏MVP 。声色一つで観客をゾッとさせてみせた。

    実話の虚構化の方法論としてずば抜けている。そして夜に浮かぶのは余りにも美しい月。どの時代であろうと人は皆輝く月の美しさに心を奪われる。自分がどんな境遇になろうと変わらぬ月の美しさ。月の光に照らされていつも何処か遠くの誰かを想うのか。

    ネタバレBOX

    実際に脱走した北川冬一郎は施設と岡山県の支配下の公的機関はグルだと睨んで、徒歩で毎日新聞大阪本社まで逃げる。「国も警察も信用出来ない、せめてマスコミはこの真実を世間に報道してくれ。」と。毎日新聞の記者、大森実と小西健吉は証拠を得る為、潜入取材に踏み切る。
    結果、事件は国会で審議されるまでの話題に。更生館は廃止、館長は投獄。

    クライマックスの辺りから、何かスッキリしない展開が続く。更生館の裏にGHQがいるような陰謀論。この辺はモヤモヤするだけ。作り手側の混乱。後日談の書籍の発売中止も判り辛い。

    升田幸三と隣家の息子のエピソード。敗けた将棋に膝を付く息子に「お前は実は勝っていた。気付いてさえいれば」と升田は告げる。息子はその詳細を尋ねるが升田は教えない。「戦争から無事に帰って来るまでに答を見付けろ」と。
    召集された戦地で息子はその答を到頭見付ける。『2三と』。

    『コウセイ』に隠されたダブルミーニング。『更生』と『恒星』なのか?ただ月は恒星(太陽)ではなく、衛星。いろいろと考えたがしっくり来ない。升田幸三は月にこだわった印象。まさしく『月下の棋士』。

    ※当日パンフに書かれていたのは多分Colaboの件。(仁藤夢乃さんは仁藤萌乃さん〈元AKB48〉の姉である)。

    『好晴』、『厚情』?

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    2023/02/25 18:48

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    0

  • ヴォンフルー様
    「コウセイ」ご観劇いただきありがとうございます!
    ご感想もいただけて嬉しいです!

    2023/02/26 10:10

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