コウセイ 公演情報 ラビット番長「コウセイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ㊗グリーンフェスタ2023 BASE THEATER賞受賞
    今まで観てきた介護・将棋・野球とは一線を画すノワール作品(敢えて言えば「白魔来る」系か)。

    戦後あった実話、それを実在したと思われる棋士と絡め、上手く物語化している。主宰の井保三兎氏が演じた増山棋士、その<増山>を<升田>に置き換えると、将棋界で有名な棋士が連想できる(エピソードは知らなかった)が…。勿論、実話〈岡山県〉と人物〈広島県〉とは地理的に近いが、接点があったか否かは定かではない。それだけに興味を惹くところ。

    内容は虚実綯交ぜに紡いでおり、脚本は重厚、演出は抒情、演技は重軽妙といった異なった観せ方をする。それでも全体的にはバランス良く仕上がっている。
    特に演出…戦場で見た月、帰還して見た月、そして〈コウセイ〉内から見た月、同じ月だが見る場所や心持ちによって印象が異なる…文学的な情景描写のよう。

    少し気になるのは、この舞台化を通して伝えたいことは何か?戦後間もない頃の施設、それを時間・地続きである現代に問うこととは…。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)2023.4.14追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、いつもと同じ二層、上部に格子窓がある別空間<多くは増山家>、下段 上手は机・椅子、下手は横石のようで、更生施設の寝床にもなる。
    この公演は、今までのラビット番長作品に較べ、舞台技術が印象的であった。窓は明り取りのような照明効果、その諧調が時や状況を表す。勿論、劇中 台詞にある月明かりをもって抒情的な場面を描き出す。また音響は場面転換時に水滴が落ちる音、それが不安・不穏を感じさせる。今までのテーマ…介護<高齢化>・将棋<生き甲斐>・野球<反戦>にしてもヒューマンドラマとしての描き、それだけに本作は新鮮な切り口だった。ただ、戦後間もない事件を通して、今 何を伝えたかったのか?

    物語はタイトル「コウセイ」から、岡田更生館事件であることは容易に検索できる。そこに将棋界では有名な増山=升田幸三棋士(井保三兎サン)を登場させ、舞台という虚構性の中に2つの事件を<間接的に>結ぶ。1つ目は先の事件、2つ目はGHQによる将棋禁止という動き。どちらも戦後という混乱期に起きたこと。
    翻って、今の日本に同じようなことが起きているのか。確かにハンセン病強制隔離、介護老人保健施設での虐待 保育園(保育士)の虐め、更には入管施設の問題等々あるだろう。また新型コロナウイルスに感染した人やその家族への誹謗中傷なども問題になった。公演では直接的な訴えではないが、理不尽なことはまだまだ続いていると、そんなことを連想させる。

    しかし、一概に国政批判なのかと言えば、少し違うような。法・制度なのか、運営・運用なのか、人の問題なのか、一方 取材のために潜入することへの慎重さ、躊躇いといったマスコミの姿勢…色々な問題意識を散りばめた内容になっている。ただ、物語は2つの出来事が並列に描かれ、緩く結びつけたといった印象だ。どちらもネット検索で可能なもの。それだけに 底流に流れる太いテーマが感じられ(観え)なかったのが残念だ。

    将棋とは切っても切れないラビット番長?…増山家の隣家、そこの長男が復員して来るまで大事にしていた思い「2三と」は、棋譜であることを示す。潜入取材する記者同士が将棋対決をする。その時に増山がさり気なく棋譜をアドバイスする。所々に細かい伏線が仕込まれており巧い観せ方になっている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/02/25 17:35

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  • タッキー様

    「コウセイ」ご観劇いただきありがとうございます!
    ご感想も細かくご覧いただけて嬉しいです。

    2023/02/26 10:08

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