入管収容所 公演情報 TRASHMASTERS「入管収容所」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/02/20 (月) 14:00

    座席1階

    かねてより問題になっている入管の非人道的行為を詳細に描いた力作。実際にあった事件をモチーフにしており、それが極めて詳細に取材されており、役者たちの熱演も相まって大変な力作に仕上がっている。
    オーバーステイというだけで何の罪も犯していない外国人を収容し、本国へ送り返すのが役割だと平然と言い放つ入管局長。虐待以外の何物でもない収容者の処遇に若手職員が疑問を持ち始めるが、局長ら上層部は「それが問題となれば、法務大臣の顔に泥を塗る」と隠ぺいの姿勢にためらいもない。東南アジアや中東の外国人=テロリストと言い、在留許可を出すことが「テロリストを野放しにして、国民の安全を危うくする」と堂々と言う。官僚たちはそこまで腐ってはいないだろうと実は思ってしまうが、この舞台ではそうした思考がある意味宗教心のように深く入り込んでいることを浮き彫りにする。
    日本の刑務所・拘置所も相当な人権侵害、虐待が行われていることが明らかになっており、この国の役人たちの上から目線というか、人権意識は、戦前に中国・韓国などのアジア人を「第三国人」と呼んでさげすんでいた視点となんら変わらず、いったい日本人は何を学んできたのかと嘆息する。

    作・演出の中津留章仁は「書きたいことは山のようにあり、その全部を描くことができないのが何とももどかしい」とパンフレットで書いている。この戯曲は、客席と舞台での怒りの共有だ。2時間40分、休憩なしで繰り広げられるハードな会話劇だが、舞台から目を離すことなどできない。人間はどうしてここまで人の命に無関心、無頓着になれるのか。精神病院の虐待事件が今、クローズアップされているが、ここで行われている虐待は、この舞台でこれでもかと描かれた虐待となんら変わらない。恐ろしいのはこれが素人によるものでなく、それなりに法務行政を勉強した人たち、専門職によって行われていることだ。

    これが日本の一つの姿であると、そこから目を背けるべきではない。戯曲としても成功している。見ないと損するぞ!

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    2023/02/20 20:41

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