リーディング公演『ロッテルダム』『若造(チャマーコ)』 公演情報 公益社団法人 国際演劇協会 日本センター「リーディング公演『ロッテルダム』『若造(チャマーコ)』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     チャマーコを拝見。インパクトのある作品だ。中南米とアメリカの関係を余りに知らない自分に気付かされ愕然。

    ネタバレBOX

     キューバの作品である。日本でキューバの劇作品が上演されることは極めて稀であることなど今更言うまでもないが、今回はリーディング公演。
     物語は現代のキューバを描き、ハバナ市街で起こった或る事件に関する十章の報告書の形で上演される。描かれるのは12月23日から26日、時間軸が交錯するので各シーンの日時をホリゾントに用意された大きな黒板に板書して示す。
     舞台上には大き目のテーブルに椅子が数脚、リーディングをしている役者だけが舞台前面に進み出て読むというのが基本パターンであり、小道具、服装なども殆ど脚本のト書きとは異なる。あくまでリーディングの抑揚や、間、照明(ピンスポによる登場人物の強調と非登場人物達の溶暗)等で表現しているのが却って直截的な効果を齎している。
     当パンには、現在制裁に喘ぐキューバの貧しさや、制裁を科しているアメリカとのイデオロギーの差等からくる生きづらさや未来を築くことを阻む諸矛盾等が解説されているが、それが妥当するか否かの判断材料を残念乍ら自分は持っていない。作品を拝見して感じたのは寧ろキューバ革命以前のキューバとアメリカの、革命前と革命後の歴史を大して知る訳ではない身として、アメリカが裏庭としての中南米やカリブ・南インド・バハマ諸島等に対しどのように非道な対応をしてきたかは中南米及び島嶼地域を概観しただけで十分に知れるという事実。今作でも家族の中で裁判所に勤める判事として人々を裁くエリートである父、そしてこの父の息子を殺した同世代の犯人はバイセクシャル。殺人犯の叔父も現在ではバイセクシャルな関係を断っているようではあるものの、かつてはそうであったと匂わせる台詞を吐いている、等。単に現在の経済制裁等の経済的或いは軍事力的支配のみならず夜の世界,即ち性的享楽・歓楽の世界に於いても、プロテスタントの強いアメリカ国内では長い間排撃されてきたホモセクシュアルやバイセクシュアル等のアメリカ国内のマイノリティーが自分たちの玩具としてアメリカ国内外の弱者を弄んで来た。それら弱者の一部として弄ばれてきた者たちがそのような性的趣味を世代として引き継いできたという歴史を今作は背景に持っていそうである。今作の唯一の救いは、殺人犯であるカレルが息子・ミゲールを殺された判事・アレハンドロと情を交わして彼の欲望を満足させた上で自決し若者の持つ最後の純粋性を見せた点にあろう。腐りきった世界に対する蟷螂の斧という程度ではあるものの、ここには精神性が在る。

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    2023/02/20 18:18

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